HOME 〉ケース紹介 〉トラック運送会社の会社破産

運送会社の会社破産

面談相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

ケース紹介

 

運送会社の会社破産

債権者数約20社

負債総額約9000万円


運送会社の破産手続きには、トラック等の車両資産の扱いやドライバー従業員対応など、他業種とは異なる特有の課題があります。

所有車両とリース車両の区別、破産申立前の資産処分による否認リスク、ドライバーを含む従業員の労働債権優先処理など、運送業特有の留意点を理解した上で適切な手続きを進めることが重要です。

今回は、運送会社の破産事例とともに、一般的な注意点を解説していきます。

この記事は、

    経営難に直面している運送会社の経営者
  • 資金繰りが心配な運送会社の顧問税理士

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2025.6.10


運送会社が破産申立を行う際の手続きと留意点

運送会社の経営が行き詰まり、やむを得ず破産手続きを検討する状況では、他業種とは異なる特有の課題があります。

特にトラック等の車両資産やドライバーを抱える運送業では、破産に伴う車両の扱いや従業員対応など注意すべきポイントが多岐にわたります。

 

所有トラックの破産手続における取扱い

運送会社にとってトラックや営業車両は事業の要です。この車両について、会社が所有している場合とリース契約で借りている場合とで、破産手続き上の扱いが異なります。

会社名義で保有するトラックなどの資産は、破産手続開始後はすべて「破産財団」に組み入れられます。

破産財団とは、破産管財人(裁判所に選任される管理者)が管理・処分して債権者への配当に充てるための財産の集まりです。

したがって、所有車両は基本的に破産管財人により売却され、その代金が債権者への配当原資となります。

破産手続に入った以上、会社が自分で車両を手元に残すことは原則できない点に注意が必要です。

トラックについては、中古であってもそれなりの価値があるものが多いです。そのため、破産申立前に処分などがあると厳しくチェックされることになります。

破産申立前に理由なく不当に安い値段で売却すると、破産財団に不利益な処分となってしまい問題になります。

運送会社が破産する場合、情報を聞きつけた競合がトラックを譲ってほしいなどと言ってくることがあります。駐車場の明け渡しなどの事情により、破産申立前に売却する場合には、少なくとも相見積を取るなどして、それ以上の金額で譲渡する必要があります。

トラック画像

リース契約の車両

リースやレンタルで借りているトラックは、会社の所有物ではなくリース会社の財産です。

そのため、破産すると車両はリース元に返還しなければなりません。具体的には、リース中のトラックは適切に保管した上で速やかにリース会社へ引き渡す必要があります。

運送会社の場合、複数台の車両のうちどれが自社所有でどれがリースかを正確に把握し、破産手続開始までに返却準備を進めておくことが重要です。

また、トラックに搭載されている機器や備品についてもリース物件が含まれていないか確認しておきましょう。

なお、リース車両の返却や事業用資産の原状回復には費用もかかります。

例えば、リース車両の返還に際しては車両を営業所にて保管し、引き取りまで維持管理するコストが発生します。また、会社が倉庫や事務所を賃借している場合には、中にある荷物や備品をすべて運び出し、物件を原状回復して返還する必要があります。

これらの作業には手間と費用が伴うため、破産準備段階から計画的に対応しなければなりません。

 

破産申立前に車両処分の否認リスク

資金繰りに行き詰まると、経営者は少しでも現金を確保しようと資産を売却したり、関係者に処分を依頼したりしたくなるかもしれません。

しかし、破産申立前の不適切な資産処分は、破産手続開始後に「否認」(ひにん)といって取り消されるリスクがあるため慎重な判断が必要です。

否認権とは、破産管財人が破産前の特定の行為を無効化し、財産を取り戻す権限のことです。

売買契約が否認されると、売却先にも迷惑がかかることになります。

否認関連では、以下に注意すべき例を挙げます。


不当に安価な売却の禁止

資産価値に比べて著しく低い価格で車両等を売却すると、債権者を害する行為(「詐害行為」といいます)として破産管財人に取り消される可能性が高いです。

例えば、本来300万円の価値があるトラックを資金難から100万円で処分した場合、会社に大きな損失をもたらす不利益な契約であるため、破産手続において問題視され、過去の売却行為が取り消されてしまうおそれがあります。

結果として、トラックは破産財団に戻され、適正価格で売り直されることになります。破産直前に相場とかけ離れた安値で資産を売ることは避けましょう。

 

特定債権者への偏った弁済

支払い不能の状態に陥った後で、一部の債権者にのみ借金を返済することも問題となります。こうした行為は「偏頗(へんぱ)弁済」と呼ばれ、他の債権者を不当に差別する支払いとして否認対象になり得ます。

特に破産手続の直前期間に特定の債権者(例えば特定の取引先や知人など)へ優先的に支払いを行うと、破産管財人によってその返済を取り消され、受け取った相手は返還を求められるケースがあります。

そのため、弁護士に破産手続きの依頼をした後は、すべての債権者への支払いを一旦ストップするのが通常です。

受任した弁護士から債権者へ「受任通知」が発送されると、債権者からの直接の取り立てが止まるだけでなく、以降は勝手な返済を控えるよう会社に指示が出されます。

 

以上のように、破産申立前に資産を処分したり債務の弁済をする際には、法律上のリスクを十分に踏まえる必要があります。状況によって適法かどうかの判断が難しい場合もあるため、事前に必ず弁護士に相談し、適切な処理方法を検討しましょう。安易な判断で資産を散逸させると、結果的に法的トラブルを招きかねません。

 

従業員(ドライバー等)の処遇と労働債権の取り扱い

次に、運送会社の破産に際しては、従業員(ドライバーや事務スタッフ)の対応も避けて通れない重要事項です。

事業停止により従業員は職を失うため、法律に則った手続きと、未払い賃金等の適切な処理が求められます。

ドライバー画像

1.従業員の解雇手続き

会社が破産する場合、雇用している全従業員を解雇する必要があります。

解雇の際は労働基準法に従い、原則30日前までの解雇予告または予告手当の支払いが必要です。ただし経営悪化で資金が尽き、給与や残業代、退職金が未払いのまま手続きに入るケースも多いでしょう。未払いの賃金や残業代がある場合、それらは破産手続内で処理すべき債務(=労働債権)となります。

従業員とのトラブルを最小限に抑えるため、可能な限り事前に誠意をもって説明し、法定手続き(解雇通知など)を踏みましょう。資金繰りが可能なら、解雇予告などの支払を優先することは事実上認められています。

 

2.労働債権の優先順位と支払い

従業員の給与や退職金などの労働債権は、法律上、他の一般債権よりも優先的に保護されています。

まず裁判所や管財人の費用などを除いた後、賃金債権等が優先的に支払われることになります。

具体的には、未払い給与のうち破産手続開始前3ヶ月の未払給与等は「財団債権」として位置づけられ、一般の取引先への債権や一部の税金よりも優先されます。それ以前の給与は、優先的破産債権となりますが、こちらも取引の借金、債務より優先されます。

従業員からすると、早く破産手続開始(裁判所の決定)が出たほうが財団債権になる部分が増えるので有利になります。未払給料の優先性という観点からは、早い破産申立が有利という結論になります。

また、退職金についても退職前3ヶ月間の給料の総額に相当する部分は財団債権となります。

なお、破産手続き中に発生した賃金(手続開始後、管財人の下で必要最低限の業務を行わせた場合の給与など)は「財団債権」の中でも最優先で支払われます。

このように法律は労働者保護の観点から、従業員の債権ができるだけ確保されるよう配慮しています。

もっとも、会社に配当原資となる十分な財産がなければ、優先される労働債権といえども全額が支払われない可能性があります。

運送業は人件費が大きいため、未払い給与の総額も多額になりがちです。経営者としては、できる限り破産申立前に従業員への給与や退職金を支払っておくことが望ましいでしょう。

法的には偏頗弁済の問題もありますが、労働債権については従業員の生活がかかっているため、会社財産に余力があるなら優先的に清算することが適切と考えられています。

事前に支払えなかった場合でも、公的制度を活用するなどして従業員の救済に努める必要があります。

 

3.未払い賃金の立替払制度

万一、未払いの給与や退職金を残したまま破産手続きを進めることになった場合、国の「未払賃金立替払制度」の利用を検討します。

これは会社の倒産によって賃金が受け取れなくなった労働者に対し、国の機関(独立行政法人労働者健康安全機構)が未払い賃金の一部を立て替えて支給する制度です。

具体的には、未払い賃金総額の80%相当額が上限として支給されます(※賃金と退職金が対象。一定の上限額があります)。

ただし利用にはいくつか条件があります。

・ 会社が1年以上継続して事業を行っていたこと
・会社が倒産(破産手続開始)したこと
・労働者がすでに退職していること
・このほか退職日の6か月以内に破産手続きの開始決定がなされていること、請求申請が退職後2年以内であること等、時期に関する要件もあります。

運送業ではドライバーに未払い残業代が発生しているケースも少なくありません。

従業員を守るため、経営者はこうした公的制度についても把握し、必要に応じて案内・支援を行いましょう。

4.下請けドライバー等の扱い

なお、運送業界では自社従業員ではなく一人親方(個人事業主のドライバー)に業務委託している場合もあります。しかし破産に際しては、その一人親方との契約関係が実質的に雇用契約とみなされる可能性も指摘されています。

もし、実態が労働者と変わらないと判断されれば、契約終了時に解雇予告や未払賃金の問題が生じるおそれがあります。一人親方との取引でも労務管理や契約内容の整理を行い、必要であれば専門家に確認してもらうことが望ましいでしょう。

実態が労働者であるという場合、それに合わせて解雇予告手当の支払が認められることもあります。弁護士に相談しながら進めると良いでしょう。

 

法人の破産申立手続きの流れ

会社破産の具体的な手続きの流れを概説します。

運送会社に限らず株式会社等の法人が破産申立てを行う場合、おおむね以下のステップで進行します。事前準備から裁判所での手続き、債権者対応まで一連の流れを把握し、スムーズな進行に備えましょう。

運送会社の破産手続きは、以下のような段階を経て完了に至ります(※事案により多少前後することがあります)。経営者として各段階で何をすべきか、概要を押さえておきましょう。

破産の流れ

事前準備・弁護士への相談

まずは破産に詳しい弁護士に相談し、会社を破産させるべきか他の再建策があるか判断を仰ぎます。破産の方針が固まったら、弁護士と正式に委任契約を結び、申立てに向けた準備を進めます。

この段階で経営者は、会社の財務資料を整理しなければなりません。具体的には、債権者リスト(借入先や買掛先の一覧)、資産目録(預金通帳、不動産登記簿、売掛金リスト、保有車両の車検証、保険契約書類など)、従業員名簿(給与台帳等)といった書類を用意します。

弁護士が受任すると、債権者宛てに受任通知を発送するか検討します。発送した場合、以後の督促・取り立ては弁護士経由となります。

受任通知を送ると同時に事業も停止するのが通常であり、発送するかどうか、また、そのタイミングは弁護士と十分に協議して決定します。

 

裁判所への破産申立て

準備が整ったら、裁判所に対し正式に破産手続開始の申立てを行います。

申立先は原則として本店所在地を管轄する地方裁判所です(本社の所在地に応じて東京地方裁判所、横浜地方裁判所小田原支部といった具合になります)。

裁判所には、弁護士が作成した申立書および必要書類一式を提出します。

必要書類には前述の各種目録のほか、直近数期分の決算書や会社謄本、取締役会議事録など、多岐にわたる資料が含まれます。

裁判所から追加書類の指示があれば速やかに対応します。

なお、経営者個人が会社債務の連帯保証人になっている場合、経営者自身の破産申立ても同時に検討すべきです。

会社と社長個人の破産手続きを並行して進めることで、会社資産・個人資産の整理を一括して行うことができます。

 

債務者審尋(さいむしゃしんじん)

裁判所に申立てを行うと、「債務者審尋」という面接手続きが指定されることもあります。裁判官面接や、破産管財人候補者との事前面談ですが、最近は減っています。

神奈川県では、よほど大きな事件でなければ、行われていないです。

 

破産手続開始決定と管財人の選任

審尋等を経て破産手続開始が決定すると、同時に破産管財人(弁護士資格を持つ第三者)が裁判所によって選任されます。開始決定が出た時点で、会社は法的に破産者となり、代表取締役はその地位を失います。

以後、会社財産の管理処分権は全て破産管財人に移行し、経営者や社員は勝手に財産を動かせなくなります。

管財人は就任後、会社の資産・負債を引き継ぎ、速やかに財産の換価(売却処分)や債権者への通知・債権調査、契約の解約手続きなどに着手します。

破産開始決定は官報(国が発行する公告誌)にも公告されるため、社会的にも「○○運送株式会社は破産しました」という事実が公に示されます(これはすべての利害関係人に手続開始を知らせ、債権届出などに参加する機会を保障するための措置です)。

破産決定


債権者集会への出席

手続きが進む中で、裁判所の定めた時期に「債権者集会」が開かれます。

債権者集会とは、破産管財人が債権者に対して手続きの進捗や財産状況を報告するための公式の集まりです。

通常、開始決定から約3ヶ月後に第1回集会が設定され、管財人がそれまでに把握した財産の状況・換価見込み、債権調査の結果などを説明します。

会社の代表者(元経営者)も債権者集会に出席し、必要な説明を行う義務があります。代理人弁護士も同席してサポートします。

実務上、すべての債権者が集会に顔を出すことは多くありません。金融業者はほとんど出席してきません。未払給与のある従業員や大口の取引先などが出席することもあります。

集会では質疑応答の場も設けられ、債権者から経営者に対して経緯の説明を求められることもあるため、真摯に対応しましょう。

債権者集会イメージ図

財産の換価・債権配当と手続き終了

破産管財人は会社の全財産をできる限り現金化し、債権者への配当原資を確保します。

換価手続きには時間を要することもあり(不動産や多数の車両売却には数ヶ月~1年以上かかるケースも)、管財人は適宜裁判所に経過報告を行います。すべての資産を処分し終えた段階で、残った資金を債権者に按分配当します。

配当においては優先順位が適用され、まず労働債権等の優先債権に配分し、残れば一般債権に配分されます。

配当が完了するか、または配当すべき財産が全くない場合、裁判所は破産手続の終結や廃止を決定します。

終結と同時に法人は法律上消滅(会社の登記も抹消)し、未払いだった債務もすべて消滅します。

こうして運送会社としての法人格は幕を下ろし、手続きは終了です。

 

神奈川県厚木市の運送会社の破産事例

約20社に対して、負債総額約9000万円という運送会社からの相談でした。顧問税理士さんからの紹介で相談がありました。

決算書等の会計書類を確認させてもらうと、一定の預金、トラックが資産としてある状態でした。。

しかし、税理士との相談で、今後の消費税や2024年問題と言われる規制の問題により、数カ月後には資金繰りに行き詰まる見通しとのことで破産を考えているとのこと。

役員報酬はかなり削っているものの、赤字決算が続いており、現状のまま業務を続けていても、資金が尽きる見込みとのことで、自己破産を希望となりました。

預貯金・売掛金などの金融資産はそれなりにあるほか、所有トラック、リーストラックなども数台ありました。

破産手続きでは3000万円以上の破産財団が形成できたという状態でした。

主要事業自体が赤字であり、規制により利益を伸ばせる構造にないと考えていたため、希望どおりの破産手続で進めることになりました。

本社が賃貸物件で早期明渡しであれば条件が良かったこと、トラックの事前処分については適正価格問題もあり、早期に破産管財人に引き継ぎ破産申立てをした方が良いと考え、依頼から数日で破産申立を進めました。

売掛金回収については依頼を受けて弁護士の預り金口座にて回収し破産管財人へ引き継ぎ、社労士業務、税理士業務は最終処理まで依頼して破産申立を進めました。未払給料はない形での申立を進めています。

トラックの保全があったことから、破産裁判所にも事前相談をし、あらかじめ破産管財人候補者を選んでもらい、破産決定後、速やかに現場での引継ができました。

中小企業の破産手続としては、高い配当率での配当により解決となりました。

一定の資産はあったものの、新規事業の開拓も、規模縮小での利益増加も難しかったことから、早期に清算という決断は評価されるべきでしょう。

 

運送会社の法人破産のご相談は、以下のボタンよりお申し込みください。

 

面談相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

オフィス

ジン法律事務所 弁護士法人

代表者:弁護士 石井琢磨

〒243-0018
神奈川県厚木市中町4-14-3
雅光園ビル702号室

TEL:046-297-4055

 

<主要業務エリア>

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

厚木本店

相談会開催中

 

横浜駅前事務所

相談会開催中

ページトップへ