中井町の会社破産
ケース紹介
足柄上郡中井町の通信工事会社
債権者数約17社
負債総額約1600万円
足柄上郡中井町で配線工事を行っいた会社の法人破産相談です。
17社に1600万円の債務があり、払えないとの相談でした。
この記事は、
-
通信工事会社での破産を検討している
- 足柄上郡で法人破産を検討している
という人に役立つ内容です。
代表者失踪による法人設立
法人設立の経緯については特殊な会社でした。破綻理由にもこの特殊性が影響しています。
法人の業務は、通信工事の下請業務でした。
会社で行っている業務は、元々、別の会社が元請から請け負っていたもの。
代表者は、その会社の従業員として働いていました。
ところが、その会社の代表者が急に連絡が取れなくなり、夜逃げ騒ぎに。その後、弁護士から、取締役を辞任する旨の通知が届きました。
元請業者も困ってしまい、善後策を話し合った結果、相談者を代表者として新たに法人を設立し、同様の仕事を請け負うことになったという経緯でした。
事務所の賃借
このような普通ではない法人設立の経緯でしたので、事務所については、従業員が明渡しをしたうえで、元請業者が改めて賃借する形を取りました。
法人を設立した際、中井町にある事務所の一角を使用させてもらうことに。
設立当初は、賃料の話はなく、転貸借契約書などは作成していませんでした。
法人破産と請負代金
元請けとの請負契約についても、事前に明確な規定はありませんでした。
支払われる金額は、人件費や部材の仕入れ代金などその月に相談者が支払う必要のある金額になっていました。法人設立の経緯からしても、元請け会社がかなり主導権を握っていた事情といえます。
ただ、元請会社の工事の売上が減少すると、元請会社から事務所物件の賃料などは手元に残させてもらうなどと、一方的に支払いの減額を告げられてしまいます。
これにより売上が経費を下回ることになり、赤字決算とならざるを得なくなりました。
さらに、売上が減ると、事務所の賃料負担などを求められる事態に。
元請け会社との間では、整理業務を請け負っていましたが、こちらも契約書もなく、単価の定めなどもない状態でした。
設立経緯から、契約関係がしっかりしておらず、債権債務がわからない状態で赤字になってしまったというものでした。
運転資金のため融資
法人設立後、従前は、現場の中心となっていた従業員が退職。
この従業員が各自のスキルを把握し、仕事の割振りなどを行っていたため、現場を回すことができるか他の従業員へ不安感が広まりました。
後任として現場を任せた従業員は、準新卒入社で、それなりの技術もあり、適任と考えていましたが、20代前半の若さで中途採用の40代が中心の現場を仕切ることはストレスが大きく、退職。
そのため、売上が著しく落込んでしまいました。人員補充のために求人を出しましたが、長い間、応募自体ありませんでした。
業務が停滞した時期に運転資金名目で融資を受け、代表者が保証人となっていました。
機械工具、什器備品などについて
法人破産では、業務に利用する機械類などの財産申告が必要です。
今回の事例では、現場での工事に、梯子や測定器・パソコンなどの工具と、それを積んで移動する車両が必要な業務でした。
車両や工具類については、元請会社のものを借り受けて使用していたとのことでした。
また、事務所も、一室に2社の事務スペースがあり、パーテーションなどの仕切りも設けていなかったとのこと。机なども相談者の会社設立前から事務所で使用されていたもの。法人の資産ではありません。
さらに、業務に使用していたパソコンも、元請会社が購入したもので、両者の業務に共有していたという実態でした。
相談者の会社として実態があるといえるのかすら微妙なところでした。
新型コロナウィルスで元請けの撤退
新型コロナウィルス感染症流行により、業界の新規契約数が減少し、元請けの工事件数も減少することになったのが原因でした。
加えて、同じ元請け系列の工事会社が、業界から撤退することに。
これらの要因から受注件数が採算ラインを下回ると判断した元請会社は、この工事事業から撤退してしまいました。
元請けからの発注が止まったため、融資を受けて運転資金を確保しつつ、新規工事の受注を試みました。
しかし、受注のあてもなく、他の工事は資格の関係で相談者以外には担当することができない状態でした。そのため、会社を維持できるだけの売上は見込めませんでした。
雇用調整助成金を検討するなどしたものの、受注が見込めないため会社を維持することが困難と判断し、破産の申立てを行うことになったという経緯です。
破綻の理由としては、元請け会社からの発注が止まったこと、その原因は新型コロナによる業界の売上低迷というものでした。
法人設立の経緯からして、元請け依存は仕方がない会社であったといえます。
法人破産と解雇通知
事業継続中での法人破産の相談で、従業員に対する解雇の相談もありました。
法人破産を進めるのであれば、どこかで解雇が必要になります。
従業員に対する説明会を開催することもありますし、代表者から説明し解雇通知を渡してもらうだけのこともあります。
今回も、弁護士名義での解雇通知を行っています。
従業員 各位
冠省 当職らは、株式会社○○(以下、「通知会社」といいます。)より委任を受けた弁護士です。同社を代理して、通知申上げます。
皆様には、日頃から通知会社の業務にご尽力いただき誠にありがとうございます。先ずもって御礼申上げます。
さて、通知会社は、経営上の都合から、今後、事業を継続して行うことは困難であると判断し、事業を廃止することとなりました。これに伴い、誠に残念ではありますが、従業員の皆様を解雇せざるを得なくなりました。
つきましては、令和4年○月○日をもちまして、貴殿を含めた従業員の皆様全員を解雇させていただきますので、本書面をもってご通知申上げます。なお、離職票等につきましては、追って送付いたします。
最後に貴殿のご健勝と今後のご発展を心より祈念いたします。
法人破産と離職票の発行
社労士がついているような会社では、連携したうえで、源泉徴収票の発行、離職票の発行などを進めます。
このような処理を自分たちでできない場合には、社労士費用の負担はできるようにしておくべきです。
また、給料未払いがあるような場合には、早期に破産申立をおこない、破産管財人による未払賃金立替え払い制度をスムーズに進められるよう手配しておきます。
事務所明渡と法人破産
本店事務所の賃貸借関係は元請けとの関係で、不明瞭なものでした。
法人破産の場合には、本店事務所などの賃借物件を明け渡してから破産申し立てをするか、明渡未了で破産申立をおこない破産管財人に明渡作業を引き継ぐ方法があります。後者のほうが破産管財人の業務量は増えるため、管財予納金は高くなります。余力があるなら、後者で進めるのが原則です。
本件では、高額の管財予納金は準備できず、法人の資産はほとんどないこと、明渡費用も高額にはならないことから、破産申立前に中井町の本店事務所の明渡を済ませています。
明渡作業には、立会いもしています。
この結果、法人の管財予納金としては20万円で手続きが進められています。
なお、代表者個人の自己破産での予納金は15万円とされています。
債権者集会2回で廃止
法人破産では、債権者集会が開かれます。代表者の出席も必要です。
今回は、債権者集会が2回開かれています。
財産もなく明渡も終了していたことから、未払い賃金立替払い程度しか破産管財人の業務は予定されていなかったのですが、過去に予納した労働保険の還付があり、この手続のため1回の債権者集会では終わらなかったという経緯でした。
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