法人破産と第二次納税義務について解説。神奈川県厚木市・横浜市の法律事務所が管理しています。

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FAQ(よくある質問)

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Q.第二次納税義務とは?

法人が破産をした場合には、滞納税金の支払いもなくなります。法人破産は主体がなくなるからです。

しかし、第三者が法人に代わって納税義務を負うことがないわけではありません。

通常の法人破産であれば問題にはなりませんが、関係者への事業譲渡などがあると、第二次納税義務の問題が出てくることもありますので、注意しておきましょう。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.12.17

 

法人廃業と税金滞納

法人を廃業する際に避けて通れないのが税金滞納の問題です。

法人が廃業を進める中で税金滞納が発覚した場合や、滞納を抱えた状態で廃業を計画する場合、問題がでてきます。

税法上では、滞納税金が完済されるまで法人の存続が認められてしまいます。

法人廃業に必要な清算手続きや登記上の処理と、税法上の取り扱いは別のものです。清算が完了して登記が抹消されても、税金滞納分の納税義務が法人に残る限り、税法上は法人が存続するとみなされます。

 

個人事業主と法人の違い

破産手続きにおける事業者の滞納税金の処理については、個人事業主と法人で大きく異なります。

個人事業主が、滞納税金を含め多額の債務を負って自己破産しても、個人の人格は残ります。消費税や所得税などの税金は非免責債権とされているため、破産後も支払い義務が継続します。

これに対し、法人が破産した場合、法人とその代表者は別人格であるため、法人の滞納税金は基本的に代表者や関係者に引き継がれることはありません。破産手続きの終了により、法人の人格自体がなくなるからです。

ただし、例外として、法人の関係者が滞納税金を支払う義務を負う代表的なケースに、「納税保証書」と「第二次納税義務」の制度があります。

 

破産手続と法人格の消滅

破産手続は、裁判所による「破産手続開始決定」によって開始されます。

この決定に基づき、法人や会社は通常解散しますが(会社法471条1項等)、直ちに法人格が消滅するわけではありません。破産手続中は清算目的の範囲内で法人格が存続します(破産法35条)。そして、破産手続の終了をもって法人・会社の法人格は消滅し、事実上その法人・会社は存在しなくなります。

 

破産手続では、破産法人の財産を売却して得た金銭を、債権者に弁済または配当します。しかし、すべての債権者に全額を弁済できるケースは稀です。

手続きの中では、配当を受けられる優先順位が決められています。ほとんどの滞納税金や社会保険料は、借金や取引債務よりも優先して支払われるルールとなっています。

まず、破産手続開始前に発生した税金で納期限が未到来または1年以内のものは、財団債権として破産債権より優先して弁済されます。その後、財団債権以外の税金等は、一般破産債権よりも優先的に配当を受けられる優先的破産債権として扱われます。

税金の支払や債権者への配当で財産がなくなれば、破産手続は終了し、法人・会社自体が消滅します。

なお、財団債権や優先的破産債権にも該当しない一部の税金等債権は、劣後的破産債権として扱われ、配当の優先順位が低くなります。

 

法人の負債以外で問われる代表者の責任

法人が破産した場合、代表者がその経営失敗について損害賠償責任を問われることは通常ありません。

しかし、重大な過失が認められる場合には、法人財産の散逸に対する損害賠償責任を追及される可能性があります。

法人の資産を代表者個人のギャンブルに使用した場合など、法人の利益を大きく損なう行為があると、破産管財人が破産法第178条に基づき、役員査定制度を活用して損害賠償請求を行うことがあります。

滞納税金の支払い義務

法人廃業においては、滞納税金の支払い義務が最終的に誰に帰属するかが問題となります。

法人の清算手続きにおいて重要な役割を果たすのが清算人です。清算人は、法人廃業時の財産整理や債務処理を行う責任者です。

この清算人が第二次納税義務を負うことがあります。

 

第二次納税義務とは?

法人廃業時の税金滞納においては、法人自体が滞納税金の納税義務者であるのが原則です。

しかし、清算人は、第二次納税義務者として滞納税金の支払い責任を負うことがあります。

本来の支払義務者が滞納税金を支払えない場合、特定の条件を満たした第三者が納税義務を負うケースがあります。このような第三者が「第二次納税義務者」と呼ばれます。

第二次納税義務を負う場合としては、次のようなものがあります。

・法人が清算を終えた後、残余財産の分配を行った場合
→ この場合、清算人や財産分配を受けた者が税金の支払い義務を引き継ぎます。

・法人の事業が特定の第三者に引き継がれた場合
→ 事業譲渡が行われた場合、譲渡先が第二次納税義務者となる可能性があります。

・無限責任社員の存在
→ 合名会社や合資会社では、無限責任社員が滞納税金の支払いを負担します。

法人廃業時には、税金滞納だけでなく社会保険料の滞納も問題となります。社会保険料についても、法人の清算人や無限責任社員が支払いを引き継ぐ可能性があります。

 

第二次納税義務者の典型例

第二次納税義務が課される典型的な例として、破産法人の事業が代表者個人や生計を共にする親族に対して無償または不当に低い価格で譲渡され、その事業が継続される場合があります。

この場合、事業を引き継いだ者は税務署から法人の滞納税金(特に法定納期限の1年前以降に発生した税金)の支払いを求められる可能性があります。

身近な関係者に対して事業譲渡をして税金の支払を免れることは認められていないのです。

国税徴収法第37条では、同族会社の主要な株主や関係者に対し、会社の滞納税金の支払い義務を課す可能性を示しています。同族会社は、税務上「利益が特定の関係者に集中するリスク」があると見なされるため、税法上の規制が厳しくなる傾向があります。

 

法人の納税猶予・分納に伴う納税保証書

第二次納税義務のほかに、法人が税金の納付猶予や分割払いを税務署に申請する際、代表者個人が「納税保証書」を提出するケースがあります。この納税保証書は、法人の納税が滞った場合に保証人が代わりに支払う義務を負うことを意味します。

このような保証をしていると、本来の納税義務とは別に保証したことによる義務が残ります。

法人が破産した場合、法人の納税義務はなくなりますが、納税保証書を提出した代表者個人には引き続き税金を支払う義務が生じます。

仮に代表者個人も破産して免責許可を受けたとしても、納税保証による支払い義務は税金の支払義務のため消滅しません。

法人の資金繰り、経営が厳しかったとしても、リスクを考えると、納税保証書は提出しないほうが良いのです。

 

 

事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務

事業を営む納税者が税金を滞納したまま第三者に事業を譲渡し、事業から撤退するケースがあります。

これが完全に他人への譲渡であれば特に問題は生じません。

しかし、譲受人が親族やその他特殊関係者である場合、第二次納税義務が追及される可能性があります(徴収法38条、地方税法11条の7)。こうしたケースは実務において比較的頻繁に見られるため、注意が必要です。

この第二次納税義務が成立するための条件は、次の点とされます。

1. 事業を譲り受けた者が納税者の親族または特殊関係者であること。
2. 譲受人が同一とみられる場所で、同一または類似の事業を営んでいること。
3. 滞納処分を実施しても納税者の財産から徴収が不足すると認められること。
4. 事業譲渡が滞納税額の法定納期限より1年前以降に行われたものであること。

これらの条件に該当する場合、第二次納税義務が課される可能性があります。

 

(事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務)
第三十八条

納税者が生計を一にする親族その他納税者と特殊な関係のある個人又は被支配会社(当該納税者を判定の基礎となる株主又は社員として選定した場合に法人税法第六十七条第二項(特定同族会社の特別税率)に規定する会社に該当する会社をいい、これに類する法人を含む。)で政令で定めるものに事業を譲渡し、かつ、その譲受人が同一又は類似の事業を営んでいる場合において、その納税者が当該事業に係る国税を滞納し、その国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、その譲受人は、譲受財産の価額の限度において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

ただし、その譲渡が滞納に係る国税の法定納期限より一年以上前にされている場合は、この限りでない。

 

特殊関係者とは

「親族または特殊関係者」とは、以下の個人または同族会社を指すとされます。

1. 配偶者(婚姻届けがなくても事実上婚姻関係と同様とみなされる者)、直系血族、兄弟姉妹。
2. その他の親族で、納税者と生計を一にする、または納税者から受け取る財産で生計を維持している者。
3. 納税者の使用人その他の個人で、納税者から受け取る特別な財産で生計を維持している者。
4. 納税者に財産を提供し、その生計を維持させている個人。
5. 納税者が同族会社である場合、その判定基礎となる株主や社員、およびこれらの者と1~4に該当する個人。
6. 納税者を基礎として同族会社に該当する会社。
7. 滞納者の同族会社の株主や社員を基に同族関係にある他の会社。

これらの基準に該当する場合は、特殊関係者と認定される可能性があります。

 

「同一の場所」とは、物理的に同じ場所だけでなく、社会通念上同一とみなされる場所も含まれます。

「類似の事業」とは、重要な事業活動の施設や活動様式を変更することなく、そのまま事業活動が行われる場合を指します(徴基通37-11)。具体的な判定は、社会通念によって判断されることになります。

 

事業譲渡の対処法

事業を譲渡する場合、この第二次納税義務を回避するためには、税金逃れでないと認められるように注意する必要があります。

具体的には、譲渡先として、親族や同族会社に該当しない第三者に譲渡することや、同一の場所で同一または類似の事業を営まないことを意識する必要があります。

なお、離婚などに伴う財産分与として事業譲渡が行われる場合、社会通念上相当であれば第二次納税義務が適用されないとされています。

 

 

無償または著しい低額の譲受人等の第二次納税義務

第二次納税義務として、他に意識しておく必要があるのが、「無償または著しい低額の譲受人等の第二次納税義務」です。

この制度は、滞納者が自己財産を無償または著しく低額で第三者に譲渡したり、債務を免除するなど利益を与える行為をしたことで、その行為が徴収不足の原因となっている場合、利益を得た第三者に第二次納税義務を課すものです(徴収法39条、地方税法11条の8)。

成立要件として、滞納者の財産処分後もなお徴収不足があることのほか、徴収不足の原因が、滞納者の無償または著しく低い価額での譲渡等によることという因果関係が必要になります。
さらに、譲渡等が法定納期限の1年前の日以降に行われたものであることという時期的な問題もあります。

 

無償または著しい低額の定義が問題になります。

無償は文字通り対価なしの行為ですが、著しく低い価額は具体的基準が問題となります。

とくに、不動産や骨董品など時価が不明瞭な財産については、通常時価のおおむね2分の1以下であれば「著しい低額」とされるのが一般的ですと言われます。

 

限度額

第二次納税義務における徴収額の上限は、第三者の立場によって異なります。

徴収額は、「受けた利益が現に存する金額」に限られます。これは、利益が形を変えて存在する場合も含みます。たとえば、譲り受けた金銭を生活費に使った場合でも、相当額の利益は「現存するもの」と推定されます。

これに対し、滞納者の親族などの特殊関係者にはより厳しい基準が適用され、「受けた利益の額」が徴収限度額となります。

 

 

第二次納税義務の裁判例

国税不服審判所令和3年4月12日裁決があります。

【事案の概要】
・滞納法人が新設分割により請求人会社を設立。
・新設分割により、請求人は滞納法人から事業を承継したが、この時点では積極財産は承継していませんでした。
・その後、滞納法人は請求人株式を第三者法人に譲渡
・さらに、滞納法人から請求人に対して事業用資産(売上債権、在庫商品等)が譲渡。
・税務当局は、請求人に対して第二次納税義務の納付告知処分を実施。
請求人は、①積極財産を譲り受けた時点では特殊関係者ではない、②事業承継時に積極財産を譲り受けていないとして争った事案です。

滞納法人は破産しています。

【審判所の判断】

新設分割によって滞納法人の事業を承継した請求人の第二次納税義務を認める判断をしています。

1. 事業譲渡と譲受財産について

徴収法第38条の趣旨は、事業の譲渡が行われるときは、通常、その事業用資産だけでなく、その事業に係る債務も譲受人に移転されるので、譲渡人の債権者が当該事業の譲渡によって不利益を受けることはないが、租税債務については私人間の合意によって譲受人に移転させることができないので、譲渡人が納付すべき国税を譲受人から強制的に徴収することができなくなり、租税債権の確保に支障が生じることとなる一方、事業の譲渡に際しては、通常、譲受人から譲渡人に対して相応の対価が支払われるので、譲受人に対して譲渡人の国税についての第二次納税義務を負わせることが酷に過ぎることも考慮し、事業の譲受人が譲渡人の特殊関係者である場合に限り、その譲受人に対し、譲渡人の国税の引き当てとなっていた譲受財産の価額を限度として、二次的に譲渡人の国税についての納税義務を負わせることにより、租税債権の確保を図ることとしたものと解される。

 

徴収法第38条の事業の譲渡とは、納税者が一個の債権契約で、一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡することである。また、会社法第762条に規定する新設分割においては、新設法人が交付する株式を対価として、分割の対象となる権利及び義務の全部又は一部が包括的に新設法人に移転することとなるため、分割の対象が事業であれば、事業が包括承継されることとなる。このように、会社法第762条に規定する新設分割による権利義務の承継は、法形式において債権契約とは異なるが、その実質においては、同様の効果を目的とするものといえることから、徴収法第38条の事業の譲渡に該当するものと解される。

新設分割における事業の譲渡の時期

会社法第762条に規定する新設分割による権利義務の承継は、徴収法第38条の事業の譲渡に該当するものと解されるところ、会社法第764条第1項は、新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する旨規定しているので、徴収法第38条にいう事業の譲渡があった時とは、新設分割設立株式会社の成立の日をいうものと解される。

新設分割設立株式会社の設立登記がされると同時に、新設分割計画の定めに従って、新設分割会社の事業が新設分割設立株式会社に譲渡され、新設分割会社が新設分割設立株式会社の株主となると解するのが相当である。

 

「本件滞納法人及び請求人において本件新設分割と併せて本件資産譲渡をしたことが認められ、そうすると、本件滞納法人から請求人への本件事業の譲渡は、本件新設分割と本件資産譲渡契約という2つの法形式により完成したことが認められる」

「近時は事業譲渡が複数の取引により行われることも通常みられ、このように複数の取引が1つの企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱うとされていること...からすると、複数の取引による事業譲渡については、いずれの取引により譲渡されたものであっても譲受財産に当たると解するのが自然である」

 

2. 特殊関係者該当性について

特殊関係者の範囲及びその判定の時期

納税者がその事業を譲渡した時において、納税者を判定の基礎とした場合に、会社の株主等の1人がその会社の発行済株式総数の100分の50を超える数の株式を有する場合におけるその会社は、徴収法第38条の特殊関係者に当たり、納税者が特殊関係者に事業を譲渡したことという徴収法第38条の成立要件の一要件を満たすこととなる。

 

本件滞納法人が事業を廃止した後、本件事業を請求人が運営していくに当たって実質的には本件資産が必要であったことから、本件滞納法人及び請求人において本件新設分割と併せて本件資産譲渡をしたことが認められ、そうすると、本件滞納法人から請求人への本件事業の譲渡は、本件新設分割と本件資産譲渡契約という2つの法形式により完成したことが認められる。


「請求人の設立登記がされた平成30年○月○日において、本件新設分割計画書に記載の事業の承継がされ、同時に、本件滞納法人が請求人の全株式を取得したことになるから...請求人は本件滞納法人を判定の基礎として被支配会社に該当する会社となり、徴収法施行令第13条第1項第5号に規定する特殊関係者に該当することとなった」

 

 

新設分割により旧会社を破産という場合、滞納税金についてのリスクを考慮する必要があるといえるでしょう。

 

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