未払賃金と会社破産
ケース紹介
未払賃金の会社破産
債権者数約50社
負債総額約8000万円
法人の破産が避けられない状況に陥った場合、経営者が最も気にかけるべき点の一つが「未払賃金」の問題です。
従業員の生活を守るため、未払賃金立替払制度を活用することが重要となります。
本記事では、制度の概要、立替払いの対象範囲や手続きの流れ、実際の事例を交えて解説します。法人破産時における適切な対応を知り、従業員への影響を最小限に抑えるための知識を身につけましょう。
この記事は、
-
企業倒産により賃金未払いの従業員
- 従業員多数の経営者
という人に役立つ内容です。
法人破産と未払賃金立替払制度
破産手続きにおける従業員への配慮は、経営者として最も気がかりな点の一つです。
特に未払賃金の問題。
これは従業員の生活に直結する重要な課題です。
未払賃金立替払制度は、労働者健康安全機構が、企業の倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立て替えて支払うものです。
立替え払い対象の未払賃金
まず、対象となる未払賃金について理解しておく必要があります。
退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している賃金や退職金が対象となります。
立替払いされる金額は、未払賃金の総額の8割となっており、上限額は退職時の年齢に応じて88万円から296万円と定められています。
未払賃金立替払いの流れ
一般的な手続きの流れとしては、法人の破産申立がされます。
破産手続開始決定後に破産管財人が選任され、未払賃金の確認作業が行われます。
各労働者が申請者になり、破産管財人が未払賃金額等の証明を行うのが通常です。もっとも、各労働者に手続きを任せると取りまとめができないこともあり、破産管財人が取りまとめて手続きを行うことがほとんどでしょう。
その後、労働者からの申請に基づき、労働基準監督署での審査が進められます。この過程において、経営者は必要書類の提出や事実確認への協力が求められます。特に賃金台帳、タイムカード等の給与関係書類は、適切に保管しておくことが重要です。
審査が問題なければ立替払いが実施されます。
支払を受けられなかった分については、破産手続きでの取り扱いとなり、財産があれば優先的に払われますが、財産が残っていなければ支払がされないことになります。
未払賃金立替払いの事例
債権者50名以上、8000万円、労働債権が約1000万円、公租公課が約600万円、財産がほとんどないという法人破産の手続きがありました。
主な対応業務としては、未払賃金立替え払い制度の利用となります。
一定の資金があれば、優先して未払賃金を支払ったうえで、破産申立をすることもあるのですが、従業員数、未払賃金額も多く、財産が尽きてからの相談だったため、早めに破産申立をして、破産管財人に引き継ぎ、立替払い制度を利用してもらうしかない状況でした。
法人破産に至る経緯
この会社は、卸売市場内での袋詰めを請負っていました。
卸売市場で取引される量にも業績が左右されますが、市場の担当者次第では、他の市場に出すようになってしまい、受注量の減少に繋がってしまいます。
担当していた一部の市場で事務処理のIT化の話があり、初期費用の負担がないということで同意しました。しかし、実際には300万円以上の負担を求められ、結局、その市場から撤退。これで売上は半分以下に減少してしまいました。
他の担当市場での取引量が急増した時期があり、他社に協力を求めたところ、市場の関係者が、仕事を請けきれないと判断したのか、新規参入社を増やし、結果、競争が激化するという事態に。
そこから資金繰りをつなごうと努力しましたが、資金繰りの目処が立たず、業務を停止しました。
全従業員を解雇し、借りていた事務所と作業場を明渡し、事業を停止。
事業については、営業譲渡をし、解雇した従業員の一部を雇い入れてもらいました。
明渡に時間がかかるリース品などは、譲渡対象外となり、引揚などの処理までそのまま置かせてもらう対応に。
明け渡し後の法人破産申立
明渡をした後の法人破産申立となっています。
未払賃金立替払い制度の利用を破産管財人に依頼、引き継ぎ、実施されたうえで、破産手続きは無事に終了となりました。
本来であれば、従業員の給料程度は資金を残したうえで事業停止の決断をしてあげたいところではありますが、引き際は難しいです。
少なくとも未払賃金立替払い制度の利用程度は問題なくできるようにしておきたいものです。
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