
デイサービスと会社破産
ケース紹介
デイサービスの会社破産
債権者数約26社
負債総額約7000万円
小田原市にあるデイサービス運営会社の法人破産事例です。
26社に7000万円の債務があり、経営状態が改善しないとのことで、破産の相談がありました。
デイサービスを含めた介護業界では、経営が苦しい会社が増えています。
介護業界の法人破産状況から解説していきます。
この記事は、
-
法人破産を検討している介護事業者
- デイサービスで経営が苦しい会社
という人に役立つ内容です。
介護業界の法人破産
日本の介護業界は、高齢化社会の影響を受け、人口の増加と共に介護のニーズも急増しています。
このため、介護事業者にとって厳しい競争環境が広がっています。
2022年の介護事業者の倒産件数は2000年以降で最多記録を更新したとの情報もあります。
デイサービスの連鎖倒産も増えているとのことです。
他の調査でも、通所介護事業所の半数近くが赤字経営であるという報道もあり、業界全体の厳しい経営状況が明らかになっています。
このような赤字の増加は、他の業界でも言えることですが、コロナウイルスの流行や物価の高騰、最低賃金の引上げなど、多くの外部要因が重なっている結果でしょう。さらに、独自要素として、介護報酬の改定という点があります。
デイサービス経営の改善
デイサービスの経営を改善するためには、以下のポイントがあるとされます。
1.営業戦略の見直し:利用者ニーズに基づいたサービスの質の向上や、独自の付加価値を設定し、競争から一歩抜け出す努力が必要とされます。
2.労働環境の整備:離職率の低下と人材の定着を目指し、育休や介護休暇などの福利厚生を充実させることが求められます。人材の確保については、他の業界以上に厳しいと言われる分野のため、当面は人員確保がポイントになります。
3.加算の積極的な算定:報酬体系の見直しや新たな加算の取得を目指すことで、収益の向上に繋げることができるとされます。
4.ITの活用:介護ロボットや管理ソフトウェア、AIを利用して、業務の効率化を図り、間接費用の削減を実現します。これらを人の負担が減る方向で活用することが求められます。
介護事業者が倒産の法的な手続き
検討される方法として、民事再生手続があります。民事再生は、債権者の合意のもとで事業を継続しながら負債を再構築する方法です。負債の一部をカットすれば、事業が再生できることが前提とされています。つまり、事業改善で利益を出せることが前提です。
しかし、介護事業の特性上、収入の大部分が介護報酬に依存しており、簡単に収益を増やすことが困難なため、民事再生はあまり現実的ではない場合が多いです。
法的な手続きとして民事再生ができないのであれば、破産手続が検討されます。
法人破産では、事業が解体され、資産が売却されて債権者に配当されます。
介護施設の場合、入居者の扱いや施設の継続的な利用が問題となります。これには通常、事業譲渡や別の事業者への事業の売却が含まれることが多く、入居者の移転やサービスの継続が考慮されます。
事業譲渡が可能な場合
他の健全な介護事業者が介護施設を引き継ぐことで、入居者は同じ施設でのサービスを継続でき、従業員も雇用が保持される可能性があります。
事業譲渡をした後に、法人破産をする流れです。
この流れで進める場合、売却される事業の価格が妥当である必要があります。
破産前の事業譲渡は安い価格での売却だと、破産管財人に否認されるなど責任追及されるリスクがあります。
法人破産の具体的な流れ
破産手続きは、弁護士に相談しながら進めるのが通常です。
事業譲渡の必要性、事業停止のタイミングなどを詰めて調整します。
その後の、破産申し立てまでのパターンは、債権者への通知をするかどうか等も含めて、何パターンかに分かれます。
いずれにせよ、負債の整理、財産の整理・評価をして、裁判所への申立てをします。
その後、破産管財人が選任された後、資産の売却等が進められます。
代表者は、裁判所で開かれる債権者集会に出席します。破産管財人による資産売却が終了し、債権者への配当ができる場合には、実施して、破産終結決定が出されます。
デイサービスの法人破産事例
小田原市にあるデイサービスの法人破産事例です。
神奈川県での届け出は、神奈川県福祉子どもみらい局にしていました。
事務所賃料、月額約46万円も滞納しているという状態でした。
職務上、高額の動産もなく、明渡し後の破産申し立てを進めることに。
破産申立前に、事務所明渡、それに伴う什器備品処分、リース、所有権留保車両の引揚げ、売掛金回収をして進めています。
デイサービス会社の売上
デイサービスの会社の主たる売上は、デイサービスの利用料です。この利用料は、介護保険の負担部分と利用者の負担部分があり、別々に入金されます。
介護保険の負担部分については、国民健康保険団体連合会からの入金となります。
利用者の負担部分については、引落の代行を利用していました。
法人破綻に至る経緯
会社の売上は、専ら利用者さんからの利用料でした。そのため、利用料収入が会社の売上に直結します。
利用料の単価は、平成24年、平成27年、平成30年と引き下げが続きました。
平成27年の引き下げにより、採算が取れなくなる可能性が出たため、事務所移転など支出の抑制を行いました。
これにより、月額賃料を約115万円から約45万円に抑えましたが、移転先の改装費用などのため約1500万円を借入れました。
しかし、その後の平成30年の引き下げ時には、周辺に競合するデイサービス事業所の増加が重なり、経営状態は大幅に悪化。
そのため、運転資金の不足を借入で補うようになりました。法人として借入ができなくなった後は、個人として借入を行い、法人に貸付けることで資金繰りをつないでいました。
しかし、資金繰りに限界が見えたため、営業を停止し、自己破産の相談に来たという経緯でした。
利用料の決定方法
介護報酬基準は、社会保障審議会(介護給付費分科会)に諮問の上で厚生労働大臣が定めます。
介護報酬基準には、介護度などに応じて単位数(単価)や自己負担割合が定められており、各利用者の利用時間にこれらを掛けることで、介護報酬の総額や自己負担部分が決まります。
また、食費などは全額自己負担となるため、介護報酬の自己負担部分に食費などの実費を加えた金額が、各利用者が負担すべき金額となります。
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