社会保険料の会社破産
ケース紹介
社会保険料滞納の会社
債権者数約7社
負債総額約5700万円
厚木市で構内作業請負を事業としていた会社の法人破産相談です。
銀行、日本政策金融公庫に2000万円以上の債務があったほか、大きいのが社会保険料滞納でした。日本年金機構年金事務所に3700万円の債務があり、こちらが払えないので事業を維持できないとの話でした。
この記事は、
-
通信工事会社での破産を検討している
- 足柄上郡で法人破産を検討している
という人に役立つ内容です。
関連会社の倒産
相談者の会社は、親会社の資本系列下、倉庫物流部門の新会社として設立され、貸倉庫等の業務を行っていました。
初代の代表者は親会社の専務が兼任する形で、経理も同社において管理していました。
しかし、数年後、親会社が倒産。
このタイミングで相談者の会社の事業も廃止することが検討されたようですが、結局、相談者の父が代表権を譲受け、事業は継続することになったという経緯でした。
そして、構内作業請負、防水工事といった新規事業獲得に乗り出しました。
ところが、貸倉庫業において顧客から預かったはずの保証料が、親会社の不透明な経理により所在不明となり、倉庫の解約にあたって相談者の会社が顧客に返還する保証料の負担を余儀なくされたり、また、事務所が盗難被害に遭い、預貯金を失ったりしたことで、当面の事業資金として、日本政策金融公庫やみずほ銀行から借入れをすることになってしまいました。
このような債務があるのであれば、親会社と同時に破産手続きを進め、別会社を立ち上げた方が良かったと考えられますが、先代の事情はよくわからないとのことでした。
売上減少で社会保険料滞納
自身の事業については、従業員の定着には苦労したものの、新規事業自体は好調で、一時期には従業員も20名程までに増えました。
しかし、その後、構内作業請負の注文者である取引先が、相談者の従業員を直接雇用し自社の従業員としてしまう事態が相次ぎ、売上が落ちました。
10年以上前から、社会保険料を滞納するようになり、新たに平塚信用金庫から事業資金を借入れするなどしていました。
代表者の死亡
その後、別会社からの構内作業請負をメインに、事業は安定して継続してきましたが、そのような中、数年前に代表者である父が死亡。
金融機関からの借入れや社会保険料の滞納も多額となっていたため、父の死を契機に事業を廃止することも検討しましたが、結局、相談者が新たな代表者となり、事業は継続することに。
しかし、取引先から、突如として、今後、構内作業を依頼しないとの連絡がありました。
10年以上、継続してきた同社からの構内作業請負が、突然なくなってしまい、同社からの売上がなくなれば事業の継続は困難と判断せざるを得なかったため、やむなく破産することを決意。
継続的な取引の打ち切りは、場合によっては違法とされることもあります。ただ、争うにもコストがかかり、体力がない会社だと、事実上、法廷紛争に持ち込むことは難しいです。これを機に事業を断念するという会社も多いです。
賃借事務所明渡後の法人破産申立
依頼時には、現金が十分にない状態でした。
一定期間があれば、売掛金の回収が見込めました。
売掛金未回収の状態では、本店事務所の明渡費用も出せない状態でした。
そこで、売掛金回収を待ちつつ、本店事務所の明渡を進めた後に、破産申立という流れとしました。
その方が、管財予納金は低くて済むのが通常です。
当方でも明渡業者選定のお手伝いをし、5万円程度での事務所の明渡費用によって、明渡後の法人破産申立を進めています。
売掛金については約400万円を回収し、管財人に引き継いでいます。
税金・社会保険滞納
金融機関の債務もありましたが、一番の債務は社会保険料でした。
また、税金滞納もあり、預金口座の差し押さえも受けてしまいました。
税金や社会保険料だと、このような突然の差し押さえがありうるので、注意が必要です。
銀行の預金約80万円について、消費税及地方消費税の滞納を理由とする差し押さえが税務署によりなされてしまっています。
異時廃止による法人破産終了
破産管財人の業務としては、売掛金の引き継ぎ、保険解約、預金口座解約というもの。
一定の財産はありましたが、社会保険料滞納が多額のため、そちらの支払のみで、破産財団はなくなり、金融機関を含む破産者への配当はできませんでした。
破産手続きでは税金や社会保険料、未払給与などは優先されるため、これらの支払ができるだけの財産がない場合には、一般債権者への配当はされません。
この場合、破産手続は、配当できる財産がないとして異時廃止という決定で終わることが多いです。
今回もそのような形で破産手続きは終了、法人も消滅しています。
社会保険料滞納を理由にする法人破産も少なくありません。
今後も、社会保険料の負担は大きくなることが見込まれ、差押えが広くされるようになると、同様に経営を維持できなくなる会社も増えてくるでしょう。
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