FAQ(よくある質問)
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Q.会社破産と事業の継続、事業譲渡は?
会社破産の際に、事業譲渡や事業の継続が問題になることもあります。
この点を整理しておきましょう。
破産法における事業の継続
会社は、通常、事業をしていて、支払ができないことから破産申立をします。
その際、事業の止め方が問題になります。
破産手続開始の決定を受けた法人は、破産法35条によれば、破産手続における清算の目的の範囲内において存続します。そうであれば、破産手続開始後においては、破産者の事業は、清算目的の範囲ではなく、廃止されるのが原則となります。
しかし、破産者の事業を継続させたほうが破産財団にとって利益になる場合もあります。
そこで、例外的に、破産手続開始決定後でも、破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができます。
ただ、破産法における事業の継続は、債権者の一般の利益に合致する場合に、例外として認められるものにすぎません。そのため、清算の目的の範囲内でのみ行われるのが原則で、基本的には、短期間に終了させることになるでしょう。
事業継続を行う場合は裁判所の許可が必要です(36条)。
事業継続が認められる場合とは?
例外的に事業継続が認められる場合とは、どのようなケースでしょうか。
短期的に終了ということを考えると、継続的に営業することは望ましくありません。
ただ、その事業についても目的によって変わります。
その短期間で利益をあげるというパターンが一つあります。
たとえば、年末年始におけるホテルや旅館業の例があります。
破産者が、このような事業を営んでいて、年末年始や大型連休などの繁忙期に、予約が埋まっている状態なのに、それ以前に破産手続き開始決定を受けたという場合、一定時期まで営業を続ければ、利益が見込めるケースもあります。
収益物件で不動産事業を行っていたような会社の場合も、不動産を売却する前提として、管理をしなければなりませんので、営業を継続するケースがあります。
このような場合、その利益を確保したほうが破産財団にメリットが有るので、例外的に事業継続が認められることもあります。
売上による利益確保のパターンとしては、仕掛工事、仕掛品がある場合もあります。
破産会社が建設会社や製造業者の場合、仕掛中の工事や仕掛品があることも多いです。事業継続により、それを完成させることで破産財団にメリットがある場合には、その範囲で事業の継続が認められることもあります。
もう一つは、事業継続による利益事態ではなく、事業譲渡を前提とした事業継続ということもあります。
破産後に、事業譲渡が予定されている場合、事業継続をしていたほうが譲渡しやすいという事情もあります。そのような譲渡代金という意味での破産財団のメリットを考えるケースです。
別の視点から、人道的な理由で事業継続を認めるケースもあります。
破産会社が病院のようなケースです。
多数の入院患者がいる場合、経費が出ていくことで破産財団に不利であっても、患者の生命や身体を守るという人道的な理由で、事業の継続が認められることもあります。
病院の破産の場合、最終的に事業譲渡ができれば良いのですが、廃止とする場合、治療停止への計画、患者の引き継ぎなどが必要になってくるでしょう。また、元患者のカルテやレントゲンの保管、写しや貸し出しの請求への対応も必要になってきます。カルテは診療終了後5年間、レントゲン等の各種書類は3年間の保管が必要とされています。
この体制をどうするか、財団債権としての費用をどうするのかなど検討が必要になるでしょう。
事業継続の場合の注意点
破産会社が事業を継続する場合であっても、その主体、事業を行うのは破産管財人です。
通常、弁護士が破産管財人になります。
事業を継続するといっても、他に業務もあり、事業に専念することができないのが通常です。
旧経営陣の関与を認めざるを得ないケースもありますが、その行為には注視しないといけなくなります。
事業継続の場合、人件費、事業所の賃料、仕入代金、販売費等、経費がかかります。これらは、すべて財団債権です。事業を継続する場合、収支計画は細かくチェックする必要が出てきます。
なお、人件費については、従業員を全員解雇して、事業継続に必要な最低限の人を臨時に雇う形にすべきでしょう。
破産管財人として事業継続をするには、事業継続をいつまでするのかという期間の見極め、また、事業継続をすることによる収支の見極めが必要なのです。
事業譲渡
破産会社の事業を清算するのではなく、事業譲渡することもあります。これには裁判所の許可が必要です。
事業譲渡の場合、申立てる前にスポンサー候補者が手を挙げていることもあります。それを破産管財人に引き継ぎ、管財人から事業譲渡を行うという流れです。
この場合、管財人としては、スポンサーを選定する過程が適正であったか、譲渡価額が相当だったか等を検討します。
破産財団にメリットが有るかどうかを判断することになります。
民事再生手続では、事業譲渡の際に、債権者の意見聴取が必要ですが、破産手続ではありません。
許認可関係の引継ぎが必要な場合には、許認可庁との調整もしなければなりません。
事業譲渡を行うのは、特許権などにより独占的事業であるとか、知名度のある商号を利用している場合、機械等の生産設備を活用できるような場合に検討されることが多いです。
事業譲渡に際して、裁判所が許可をする場合、裁判所は、破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合、または、当該労働組合がない場合は、使用人その他の従業者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないとされています。
ここでは、意見を聴けばよい話であるため、同意までは必ずしも必要ありません。
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