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FAQ(よくある質問)

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Q.整理解雇の4要件とは?

法人破産以前に、経営状況が悪化した会社では、整理解雇が実施されることがあります。

整理解雇については、判例上、4要件という話があります。

要件を満たさない整理解雇をしてしまう解雇が無効になり、賃金相当額の請求が後からされるなどします。

これにより経営状況が悪化してしまう恐れもあります。

整理解雇の有効性については判断が難しいのですが、判例等を確認して、慎重におこなうべきでしょう。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

 

解雇の種類

今回は、整理解雇の4要件を解説します。

解雇については、会社側の事情でする整理解雇、労働者側の事情でする普通解雇、懲戒解雇があります。
適性がないとか、犯罪行為など懲戒事由に書かれている問題を起こした解雇です。
今回は、解雇の中で、会社側の事情でする整理解雇の問題です。

整理解雇

 

経営が厳しいなどの理由でされる解雇です。

整理解雇では、判例上、4要件が必要と言われていました。
人員整理の必要性、解雇回避努力、人選基準の合理性、手続きの妥当性という4点です。

4要件

言葉が難しいのでわかりやすい言葉に置き換えます。

1つ目は、人員整理の必要性ですが、解雇しなきゃダメかという問題です。
2つ目は、解雇回避努力ですが、他に方法はなかったか、という問題です。
3つ目は、人選基準ですが、誰を解雇するか?という基準が合理的かどうかという点です。
4つ目が手続きの妥当性、これは手順はOKか?というものです。労働者と協議しているかどうかなどのポイントです。

 

整理解雇4要件

かつては、4要件と言われていたのですが、現在は、ほとんどの裁判例が要素として考えています。
要は、すべて満たさなければならない、という要件とは違う、4つのポイントという考えです。

こちらの4要素について解説していきます。

 

人員整理の必要性

まずひとつ目が、解雇しなきゃダメかどうかという点です。
経営状況には程度があります。
利益がしっかり出ている黒字ゾーンから、倒産必至の赤字ゾーンまであります。
裁判例の中では、赤字ゾーンの倒産必至に近い経営状況でなければ、この要素を満たさないとするものから、経営上の理由ならOKという比較的軽めに判断するものまで分かれています。

人員整理の必要性

このポイントでは、決算上の数字などがどう推移しているのか重視されることが多いです。
解雇しないと経営維持ができないのかどうかチェックしていくことになります。

 

タイカン事件

解雇しなきゃダメかという要件に関係する裁判例の紹介です。
タイカン事件と呼ばれる事件です。


ゴルフ場などを経営している会社でした。

経営状況について色々と主張されました。

タイカン事件


整理解雇の理由ですが、事務所を閉鎖するので、そこで働いていた人を解雇するという内容でした。
経営状況も悪く、3期債務超過が続いていました。
しかし、裁判所は、経費削減で対応できた可能性があった、グループ会社の状況を見ると新たな雇用もしている、などという点をあげ、 解雇の必要性を否定、整理解雇は無効と判断しています。

 

三陸ハーネス事件

1つ目の要素、解雇の必要性について、事業廃止のような場合には、4要素ではなく、別基準で判断するという裁判例もあります。
三陸ハーネス事件です。

このゾーンの中では、赤字ゾーンに近い事件です。

主要取引先が海外移転のため、事業廃止。
退職金を上乗せしたり再就職先の斡旋などをして整理解雇した事件です。

三陸ハーネス事件

4要件、4要素ではなく、違う基準で判断しました。
事業廃止の場合には、その事業廃止の必要性があったかどうか、解雇が妥当だったかという判断基準を使いました。


海外に移転した取引先が唯一の取引先であり、これを覆せなかったこと、6回にわたる団体交渉、再就職のフォローをしていることなどから、これらの基準によっても整理解雇は有効と判断しています。

 

解雇回避努力

次に2つ目の要素。


他に方法はなかったか?という解雇を回避する努力をしたかというポイントです。

経営上の解雇だとしても、他にとりうる方法がなかったかどうかが問題視されます。
よく言われる選択肢としては、役員報酬の減額、経費削減、配置転換、給料の減額、希望退職者の募集などです。
このような方法を検討、実践してもダメだったときの最終手段として整理解雇するしかなかったかどうか問われることになります。

解雇回避努力

 

国際信販時件

この2つ目の要素について裁判例を紹介しましょう。
国際信販事件です。


この会社では、クレジット・信販事業部と、旅行事業部がありました。
ここで旅行事業部の廃止が決定。


旅行事業部の従業員を整理解雇したという事案です。


裁判所は、この2つめの要素について、
他部門で吸収できる余地があった、配置転換の可能性も検討していない、提案もしていないなどを理由に、解雇を無効としました。

国際信販事件
事業部の廃止などの場合には、このような配置転換等、他の手段を検討しなければならないのです。

 

 

人選基準の合理性

3つ目の要素が、誰を解雇するかという問題です。

全員を解雇するというのではなく、一部を解雇するという場合には、解雇する人を選ばらないといけません。
この際に、社長や担当者が、「あいつ嫌い、クビ」と恣意的なことはできないわけです。


ここでは、合理的な基準を作ること、それをちゃんと当てはめることが必要です。

たとえば、過去の勤務態度を欠勤日で判断する、過去の貢献度。これを量で考えるには勤務年数で判断する、貢献度の質で考えるには実績で判断する、
会社との密接度という基準なら正規か非正規かなど立場で判断するという方法です。その他、労働者側の事情、年齢、家族構成などの基準も使われます。

 

人選基準の合理性

 

日本航空事件

ここで裁判例を紹介しておきます。

日本航空事件です。
日本航空が、経営破綻して会社更生法の適用を受けました。
その更生計画案の中で、客室乗務員の整理解雇をしたところ、客室乗務員から解雇無効だと裁判をおこされた事件です。

 

ここで誰を解雇するのかの基準が争われました。

問題になったのが、病欠・休職等基準でした。


過去一定期間以上の休職や病気欠勤がある者や、 基準日時点で休職中の者を対象にするという内容でした。
一審では解雇無効とされたのですが、高裁では、この基準が有効、解雇も有効と判断しています。

将来の貢献度に着目して、直近の休職状態などを基準にするのは合理性があると判断されています。
また、どこかで基準日を設定しなければならないことから、基準日の設定も違法ではないと判断しています。

日本航空事件

 

みくに工業事件

もうひとつ裁判例を紹介しておきます。

みくに工業事件です。
工作機械類の製造、販売をしていた会社です。

準社員が整理解雇された事案です。


誰を解雇するかの基準で、会社との密接度、正規か非正規かという基準で人選をしたというケースです。
裁判所は、終身雇用の正社員と準社員は違うものの、退職金以外の部分で正社員の就業規則や給与規定が適用されたり、大した違いがなかったことから準社員でも会社とは密接な関係があるとして、正社員に準じて判断、解雇は無効としています。

みくに工業事件

 

手続きの妥当性

4つ目の要素、手順はOKか?というポイントです。
労働者と協議しているか、などが問題になる点です。
裁判例をチェックしましょう。

こちらはザ・キザン・ヒロ事件と呼ばれるものです。
タクシー会社の事件です。


営業所を閉鎖するため、全従業員を突然整理解雇した事件です。

閉鎖理由は、会社の事業譲渡によるものでした。その契約や交渉をしている段階でも従業員に説明無し。
解雇後の説明会でも、事業譲渡に触れず、解雇理由は抽象的なものだけでした。
労働組合からの団体交渉も拒絶したという内容です。

手続きの妥当性が問題視されたことなどから、解雇無効と判断されました。

 

ザ・キザン・ヒロ事件

 

まとめ

今回の話をまとめます。
解雇のうちの、会社の経営状況を理由とする整理解雇では、4つの要素で、有効性が判断されています。
解雇しなきゃダメなほどの経営状況だったかどうか
配置転換など他に方法はなかったかどうか
誰を解雇するかの基準は合理的だったかどうか
協議など手順は妥当だったかどうか
という点です。

労働者側から、整理解雇は無効だと争う場合には、労働者としての地位を確認する訴えや仮処分を裁判所に申し立てて判断してもらうことが多いです。

その前提として、自分の主張を明らかにしたうえで、働く意思があることは伝えておきましょう。

 

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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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