FAQ(よくある質問)
FAQ(よくある質問)
Q.法人破産に前兆はありますか?
倒産の前兆についての話です。
法人破産に前兆があるかについては、過去の事例が参考になります。
2冊の本から、多数の倒産事例をチェックできます。
まず『なぜ倒産』という本。
こちら帝国データバンクと東京商工リサーチの協力で日経トップリーダーが編集している本。
もう1冊が『倒産の前兆』という新書。
帝国データバンクの情報部が作った本です。
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この2冊をチェックすると、最近の企業倒産の原因が多少は見えてきます。
経営者の人であれば、取引先の倒産リスク、
会社員の人であれば、勤務先の倒産リスクをある程度知ることができ、人生のリスクを下げられるかもしれません。
倒産は秘密裡に進める
ただ、基本的には倒産は、秘密裡に進めるものです。
取引先に倒産情報が伝わらないように進めます。
従業員にも突然のことがほとんどです。
働きに行ったら、会社が閉まってたとか、突然、全員解雇などが普通の話です。
社長から倒産手続きを依頼された弁護士は、秘密裡に進めるよう指示します。
倒産情報が取引先に漏れれば、我先に、と回収に走ってくるでしょう。
債権者が取引を打ち切ったり、売掛金を払わなくなったり、商品を引き上げに来たり、少しでも回収しようとして現場からものを引き上げたりするでしょう。
そうすると、不公平な弁済や、財産減少という事態が生じます。
倒産手続きは公平に財産を分配することを前提としています。
倒産手続を依頼される弁護士としては、これを確保しなければならないのです。
倒産予定であるとか、いつをXデーにするかという情報は社長以外に誰にも喋らせない、せいぜい会計担当者くらい
ということが多いでしょう。
そのため、前兆というものは、非常に見えにくいのです。
これを前提に、予兆を見極める精度を数パーセントくらい上げられるかも、というのが、このような類似事案の検討でしょう。
「倒産の前兆」というタイトルの本にすら、全く何も前兆がない事例もあると書かれています。
多大な期待は禁物です。
企業が倒産する3パターン
2冊あわせると、50社くらいの事例を確認できます。
『なぜ倒産』の中では3パターンの倒産の話が紹介されています。
一つ目は急成長した後の落とし穴。
急成長後の落とし穴で倒産してしまうというケース。
二つ目がビジネスモデルが陳腐化。
三つ目がリスク管理に甘さ。
急成長の落とし穴
一つ目の急成長の落とし穴という点は、『倒産の前兆』でも結構取り上げられています。
大きなヒット商品があり、これで会社が急成長したのに倒産してしまうという話です。
たとえば、遠藤商事という会社。
ヒット商品が出て、フランチャイズ化で拡大したものの、フランチャイズの仕組みが不十分で行き詰まり、倒産になったと分析されています。
急成長の場合、フランチャイズ展開というケースも多いでしょう。
しかし、そのような拡大のための体制が作れていなくて、指導もできず、とりあえず出店だけ急ごうという話でクレームという結果です。
急成長で、フランチャイズ展開という会社では、このようなクレームの声をチェックするとなにか見えるかもしれません。
また、高ヒット商品が出たとしても、商品にはライフサイクルがあるので、そのブームの終焉を見まちがえると、結局そこに固執してダメになってしまいます。
さらに、急成長すると、会社にお金が入ってきます。
役員が派手な出費をしたりするのはわかりやすいサインです。
会社として派手な出費も要注意サイン。
本社ビルの購入などの場合には、必要性が本当にあるのか確認した方が良いでしょう。
次に、急成長に近い問題として、高尚な理念だけが先行するパターン。
福島電力が紹介されています。
高尚な理念が先行するパターンです。
理念だけが先行して、勢いよくこう社会的に良い行動をしようと公言しているものの、中身が追いつかないというケースです。
社内の体制整備を全くできておらず、それでダメになってしまうというパターンです。
高ヒット商品や高尚な理念をアピールしている場合には、社内の仕組み的なところをチェックできると良さそうですね。
ビジネスモデルの陳腐化
次は、ビジネスモデルの陳腐化。
ビジネスモデルが陳腐化してしまって経営が悪化してしまうパターン。
大手取引先のビジネスモデルには目を光らせておかねばなりません。
たとえば、百貨店に販売を任せているようなビジネスモデルでは、百貨店自体が経営悪化してしまうと、それでダメになってしまいますね。
ビジネスモデルの話では、競合も問題になります。
今さらですが、非常に多いのはインターネット販売。
リアル店舗がネット化に対応できず、経営悪化してしまうケースは多いです。
子ども服の販売会社がうまくいっていたのに、メルカリなどの ECでやられてしまったケースが紹介されています。
他にも、老舗和菓子屋さんがコンビニスイーツにやられた話なども紹介されています。
老舗和菓子屋と取引している場合には、このような流行もチェックしておいた方が良いことになります。
リスク管理の甘さ
3つ目。
リスク管理の甘さ。
例えば、一社に依存している経営はリスクが大きいですね。
一社の経営悪化により連鎖倒産もありえます。
大手のみに依存してしまっているビジネスモデルだと、リスクは高まるわけです。
経営悪化以外に、関係悪化で、取引打ち切りなんてリスクもありますね。
継続的な取引だったのに、急に打ち切られてしまうというリスクです。
継続的な取引についての一方的な解消については、そのような解約や解除、取引停止が有効なのか争われるケースもあります。
ただ、現実で取引が止められてしまうと、争っている間も経営がもたないという事態も考えられます。
リスク管理の甘さとしては、資金繰りの管理はもちろんチェックが必要です。
例えば、取引先の売掛金の支払いが遅れているのに、会長や社長が出てきて「心配はいらないよ」という場合。
根拠ない自信は危ないです。
自分たちは大丈夫というアピールだけで根拠があまりないような話は信用しないように。
倒産必須のパターン!?
このような観点から、多少は、倒産の前兆を確認できるようになるかもしれません。
本の中では、前兆なく倒産したケースも紹介はされています。
ただ、逆に、倒産必須というパターンはあります。
本の中で紹介されているのは、ポンジスキームの詐欺の仕組みで破綻したケフィア事業振興会。
オーナーになれば年10%の利子を上乗せして権利を買い取るということで資金集め。
初期の人には利益を渡していたと。
ただ、その出どころは、次に加入してきた人のお金から分配しただけという内容です。
このようなポンジスキームは昔からあるわけですが、今回のケフィア事業振興会については決算の話がされています。
2017年7月期決算では
売上約1000億円が出ていたそうです。
ところが、在庫2400万円、買掛金が2100万円という数字。
売り上げが1000億円の会社が、在庫や買掛金2000万円台というのは、事業として明らかにおかしいと。
決算書用の数字としては実態が乏しいものではないかと疑えたということです。
決算内容を確認できる場合には、同様の規模の会社の数字と比較することで、事業実態を把握できる可能性があるわけですね。
倒産しやすい社長
コラムでは、倒産しやすい社長の傾向が紹介されていましたので、こちらもチェックしておきましょう。
社長が以下に当てはまるパターンでは倒産リスクが高いとのこと。
・数字に弱い
資金繰りで心配はいらないという発言も数字に弱ければ説得力ゼロですね。
・人情味に熱い社長
人情味に熱いと冷酷な判断ができないのでしょう。経営には冷徹さも必要。
会社破産の相談では、従業員思いのいい社長なのに・・・と感じることも多いです。
・明確な経営理念がない
・社長以外の実権者が存在する
経営破綻前に、第三者が介入してきてダメになってしまうケースもあります。
変なコンサルに引っかかったり、社長の交代で親族が割り込んできたり。
このような社内のトラブルは倒産を呼びやすい。
このあたりは従業員のような会社内部の人なら気づきやすいですね。
取引先としては従業員から社内の変化について情報をもらえるようにしておくと良いですね。
・社員が挨拶できない
・担当者が頻繁に代わる
・退職者が増えている
・幹部の退職
このあたりは、逃げる寸前の詐欺業者に多い傾向です。
まとめ
2冊の倒産本から、企業破産の前兆を確認しました。
倒産必須のパターンはあるにしても、多くの倒産事件では前兆は察知しにくいです。
ただ、類似のパターンをチェックすることで、察知力を数パーセント上げることはできるかもしれません。
これにより自分の利益を守れるかもしれませんので、詳しく知りたい方、また自社の経営を見直したい方は、2冊をチェックしてみてください。