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役員借入金と会社破産

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ケース紹介

 

役員貸付金の会社破産

債権者数約16社

負債総額約1900万円


横浜市西区にある建築設計を事業とする法人破産の事例です。

会社の決算書と預貯金が大きく乖離しており、使途不明金があるという会計状態でした。

役員貸付金や役員借入金としてこれらの数字を合わせている法人も多いですが、法人破産の場合には、これらの処理が問題となります。

この記事は、

    決算書上、役員貸付金があり法人破産を検討している
  • 役員借入金があり法人破産を検討している

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.3.21

 

会社の破産と役員個人の資産

法人と個人は法律上、別個の人格として扱われます。

これは、会社が破産しても、基本的に役員の個人資産はその影響を受けないということを意味します。会社の負債は会社が、個人の負債は個人がそれぞれ負うという原則です。

しかし、この一見明快な分離にも例外は存在します。

 

役員が個人的な破産に至るケース

会社の破産と合わせて役員個人も破産するリスクがあります。

個人保証の場合がまずあります。

会社の借入に対して個人保証をしている場合、会社の破産が個人に直接の影響を及ぼします。債権者は保証人である役員に対して返済を求めることができ、これが役員の破産を引き起こす可能性があります。

最近では、代表者を保証人にすることは昔よりは減っています。しかし、金融機関の融資やリース契約などでは、まだ保証人になっていることが多いです。

会社名義の債務に、このような債務があると、役員個人も何らかの債務整理が必要になります。

 


役員貸付金の存在

会社の会計上、会社から役員への貸付金がある場合、これを返済しなければならない責任が生じます。

返済が困難な場合、役員個人の破産につながる可能性があります。

会社の決算書上、役員貸付金が計上され、多額になっていることも少なくありません。

明確に会社から役員に貸し付けた場合もありますが、多くの場合、税務・会計処理でそのような勘定が使われているだけで、役員自身がこのような貸付金という認識をしていないことも多いです。

実態が貸付でないという場合には、会社の破産手続きで、そのような説明をすることになりますが、貸付ではないとしても、会社から役員に対してお金が動き、何らかの権利が会社にあるという場合には、破産管財人からの請求がされることもあります。

この場合、役員個人としては、会社に債務を負うことになるので、金額によっては、破産などの債務整理が必要になってくるのです。

 

破産管財人の否認権行使

破産管財人は、破産手続き開始前の特定の行為を無効にする権利を持っています。否認権と呼びます。

これにより、不正な資産移転などが行われていた場合、それらを取り消し、結果的に個人破産に至るケースもあります。

会社から役員に対する財産移転、名義変更などがある場合には、この点に注意が必要です。


役員の会社破産に関する責任

役員個人が会社の破産に関連して負う可能性のある責任もあります。

たとえば、会社法に基づき、役員がその職務を適切に果たさなかった結果、会社が損害を受けた場合、役員は損害賠償責任を負うことがあります。これは、役員が善管注意義務や忠実義務を怠った場合に特に当てはまります。

また、ひどいケースでは、刑事責任を負うこともあります。詐欺破産罪や特定の債権者に対する担保の供与等の罪など、不正行為に関連して刑事責任を負う可能性もあります。意図的な不正行為が発覚した場合に特に問題となります。

 

役員貸付金と破産配当

役員借入金とは逆に役員貸付金が会社の会計上、計上されていることも多いです。

会社が破産する際、経営者やその一族が自己の資金を会社に貸し付けている場合、これらの人々は会社に対する債権者となります。

法的には、他の債権者と同様に、破産した会社の資産からの配当を受ける権利を有しています。

しかし、こうした状況は他の債権者から見れば不公平と映ることが多く、そのために破産管財人が経営者や一族に対し、債権届出を撤回するよう説得することがあります。

 

破産代表者の破産財団

一方で、会社の代表者自身が破産している場合には、代表者の会社に対する貸付金債権は、代表者における破産財団の一部となり、破産手続きの配当原資となります。

通常は、同じ破産管財人がつき、あえて、会社からの回収はせずに進めることが多いです。

会社からの配当を得ようとすると、代表者自身の破産手続きも遅れることになるため、債権届などもしない運用が多いでしょう。

 

 

内装設計・工事会社の法人破産事例

店舗や住宅、オフィスの設計、施工を事業としていた法人破産の事例です。

主に元請として工事を請け負い、協力業者に各種工事を発注し、工事の管理監督を行っていました。

神奈川県知事の許可をとっての業務でした。

代表者と妻が株主、本店も代表者の自宅でした。

 

法人破産と役員貸付金事例

法人の決算書上、使途不明金がありました。

代表者と会社との間で、会社から借入れを行ったり、その返済を行ったりしていたとのことでした。

これらの貸付けについては、決算書に計上していないとのこと。

法人の貸借対照表の現預金額と実際の現預金額の差額である約6000万円が使途不明金、貸付金になるというものでした。


代表者によれば、自己資金だけでなく、法人名義の預金でもFXをしてしまい、多額の使途不明金が出てしまっているというものでした。

代表者視点では、客観的には法人からの借入をFXに充てており、免責不許可事由があることは否定できません。

ただ、本件のような小規模な法人では、法人と代表者の資産が混同されることが少なくない点を主張しました。

代表者の認識としては、「手元」の資金の範囲内でFXを行ったのであり、業者からの借入を使っての行為と比較すれば、著しく悪質とまではいえないと主張しました。

                                   

代表者の過去の個人再生

もともと、代表者は過去に個人再生をしていました。

東日本大震災に起因して株価指数先物取引などで大きな損害を出してしまい、多額の債務を負い、自力での支払が困難となり、個人再生を申立てていました。

再生計画に基づく支払は完了していました。

その後、会社の経営は順調でした。

また投資も再開し、アベノミクスによる株価高の中で、ある程度の利益が出ていました。

 

しかし、数年前から、法人の固定客からの仕事の減少により、売上が減少。

それにより、資金繰りが悪化し、運転資金などのため、個人と法人で借入をするようになりました。

法人名義・個人名義でそれぞれ、運転資金や生活費の借入れが増えてしまいます。

業者からの借入れが難しくなり、知人などから借入れをするように。

返済は困難と考え、法人と共に自己破産することにしました。

 

代表者も合わせての自己破産となったため、役員貸付金や使途不明金の問題はそこまで追及されず、代表者の免責不許可事由の問題として対応されました。

最終的には裁量免責の許可が出ています。


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