塾の会社破産
ケース紹介
塾経営の会社破産
債権者数約11社
負債総額約4500万円
厚木市の塾経営会社の法人破産事例です。
保証協会、公庫に各1500万円、社会保険料800万円の滞納があり、資金繰りが限界との相談でした。
塾については、事業譲渡による対応となりました。
今回は、塾経営の特徴も合わせて解説します。
この記事は、
-
塾の経営が厳しい
- 事業譲渡後に法人破産を検討している
という人に役立つ内容です。
学習塾の経営難の背景
学習塾は、地方都市から大都市まで、日本全国に広がっています。
しかし、近年、学習塾の経営難が深刻化しています。
その背景には、少子化や教育環境の変化、そして塾自体のビジネスモデルの問題があります。
少子化と学習塾の経営
日本の少子化は、学習塾の経営に大きな影響を与えています。
子供の数が減るということは、塾の顧客である子供たちが減るということです。その結果、塾の経営は厳しくなり、倒産する塾も増えています。特に、少人数制の塾は経営が難しいとされています。
塾を経営するのであれば、その塾の商圏における少子化がどの程度進むのか見通しを立てる必要があるでしょう。
塾のビジネスモデルとその課題
学習塾のビジネスモデルには、大人数制の集団指導、少人数制の集団指導、個別指導などがあります。
それぞれのビジネスモデルには、それぞれの課題があります。例えば、少人数制の塾は、生徒一人一人に対する指導が可能ですが、経営は難しいとされています。
一方、大人数制の塾や個別指導の塾は、経営が安定していますが、教育の質に問題があるという意見もあります。
それぞれの塾形態において、ターゲットとなる子供の教育レベルが違うことが想定されます。経営している塾がターゲットとして想定している子供を含む世帯の増減を見極める必要があるといえるでしょう。
塾経営の成功要因と失敗要因
塾業界は、教育の一環として子供たちの学習をサポートする重要な役割を果たしています。
しかし、近年、塾の倒産が相次いでいるという報告があります。
日本の少子化は塾業界にとって大きな課題です。子供の数が減少すると、それは直接的に塾の顧客数の減少を意味します。特に、地方の塾はこの影響を大きく受けています。
塾業界では、開業して最初の3年が勝負と言われています。
初年度に入学した生徒が実績を出すためには最低でも3年かかるからです。しかし、実績が出ていないうちは生徒が集まらず、3年すら持たせられない塾が多いとの報告があります。中期の資金繰りが重要になってきますね。
塾経営においては、自塾の特色や強みを明確にすることが重要とされます。
他の塾との差別化です。
塾選びの決定要因として、口コミの影響力は非常に大きいです。良い口コミを得るためには、質の高い授業を提供するだけでなく、保護者とのコミュニケーションも重要です。当然ながら実績も重要になるでしょう。
塾業界は、少子化や経営環境の変化など、様々な課題に直面しています。しかし、その一方で、教育への需要は決してなくなることはありません。これからの塾業界は、これらの課題を乗り越え、新たな教育の形を提供していくことが求められます。それは、オンライン教育の普及や、AIを活用した個別指導など、新たな教育の形かもしれません。
このような要因により塾を経営する会社も自己破産をすることがあります。
今回は、学習塾のフランチャイズ経営をしていた会社の法人破産事例を紹介します。
塾の破産に至る経緯について
この会社は、もともと代表者が個人事業主として始めたものでした。
最初から、塾のフランチャイズ契約をし経営をしていたとのこと。
他の事業も並行して進めようと考え、法人化したとのことでした。
そちらの事業はうまくいかずに撤退し、結局、塾の経営が主な事業となりました。
開始当初から経営は順調に進められていたようです。経営開始時の塾の構造的な問題としては、実績がなく集客が難しいという点がありましたが、この点をカバーできるのがフランチャイズといえるでしょう。その塾の知名度により、集客が可能になります。
順調だったこともあり、設立から3年めに2校舎目の契約をし、複数校を展開。1校舎目の営業がうまく行き、法人の資金も貯まったので2校舎を展開し始めたという経緯です。
しばらくは良かったのですが、徐々に売上が減少し、10年前頃から赤字決算が続くようになってしまったとのこと。
理由は売上の減少でした。
良いときは、4,5000万円の売上があったのですが、これが少しずつ減り、直近では2000万円台にまで落ち込みました。
売上が半減した理由は、塾を展開していた地域など、駅から離れている地域の子供の数が減ったことが一番でした。
競合により売上減少
また、それ以外にも、近くに競合の塾が増えてきたことも原因とのことでした。
開業した時期には、塾はなかったのですが、その後に、フランチャイズの塾が3校できてしまい、人口減少と競合の登場により、売上減少には歯止めがかかりませんでした。
徐々に売上が減っていくなかで、代表者の役員報酬を減らして資金繰りをしたり、融資を受けて運転資金に回していたのですが、売上はなかなか戻りませんでした。
4年前には、役員報酬をほとんど出せなくなり、代表者自身の生活費も不足したため、アルバイトをして自分の生活費を稼ぐという状態に。
法人自体の利益はなく、社会保険料の滞納も発生していました。
塾の構造上、人件費がかかり、社会保険料も多額となる傾向があります。これを含めた資金繰りを考えないと、行き詰まってしまいます。
新型コロナウイルスの蔓延により、状況はさらに悪化。補助金や融資を受けて、何とか経営を継続していましたが、事業継続は難しいと判断。
塾の法人破産と事業譲渡
事業継続は難しいと考えたものの塾には生徒がいるため、経営を断念するにも迷惑をかけない形でしなければならないと考え、フランチャイズの本部とも相談。
本部では、解約しても事業を買い取ることはできず引継は無償になり、その場合、本部側で塾店舗を引き継いでくれる人を探すとのことでした。
これと並行して、事業を引き継いでくれる人を個人的に探していたところ、個人事業で引き継ぎたいとの希望を出してくれる人がいました。
フランチャイズ本部に引き継ぐより、従業員との関係などもトラブルが少ないと判断し、本部とも相談して、事業譲渡という形を取りました。
事業譲渡契約書もフランチャイズの本部が作成し、三者間の契約となりました。
事業譲渡契約書では、譲渡代金は1円とされました。
フランチャイズ費用の精算
フランチャイズで預けていた保証金については、費用等が控除され、返還されました。
法人名義の賃貸借契約も合意解約となり、保証金150万円が返還されました。
なお、リース契約については、事業譲渡の対象外とされました。リース物件は引き上げられています。
事業譲渡後、破産申立の相談となりました。
法人破産前の事業譲渡
本件では、塾の経営を突然断念すれば、生徒などの利用者に迷惑をかけることが予測されました。
そこで、事業譲渡という形を取っています。
法人破産前に事業譲渡をした場合、その正当性が問題視されることもあります。
不当に安く事業を譲渡すると、破産手続きで否認対象にもなりえます。特に、本件のように無償に近い形での譲渡の場合にはしっかりと検証されることになります。
破産管財人が選任後、事業譲渡の正当性については検証されましたが、本件では、本業での赤字状態が続いている事業であったことや、他に消費者に迷惑をかけずに精算する方法がなかったことから、事業譲渡もやむなしと判断され、そのまま塾の経営も第三者によって継続できることとなりました。
本件のような塾の自己破産では、事業譲渡もやむを得ないと判断されることが多いですが、ケースバイケースですので、事業譲渡後に法人破産を考えている経営者の方は、早い段階で弁護士に相談しておき、問題点を整理しておいた方が良いでしょう。
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