愛川町での会社破産
ケース紹介
愛川町の建築塗装会社
債権者数約40社
負債総額約2900万円
神奈川県愛甲郡愛川町で派遣業を経営していた会社の相談です。
税金の差押を受け、運転資金がショートしたということで相談に来ました。
この記事は、
- 法改正により事業継続が困難になった
- 滞納税金が多額にある
という人に役立つ内容です。
知人と共同設立
20年以上前に、代表者が、前の職場を解雇され、今後どうしようかと思っていたときに、知人のアドバイスを受け、知人と一緒に工場内作業の業務請負を業して共同設立した会社でした。
開業資金も知人からの借り入れでした。
その後は、知人からの借り入れも解消し、比較的、順調な経営ができていました。
共同設立者の退職
しかし、共同設立者は、会社を去ることになりました。
会計業務を担当していたところ、無断での多額の支出が発覚したことが理由でした。
共同設立者ということもあり、退職金がわりに一定の財産を渡し、会社を退職してもらうこととなりました。
これが原因で、納税資金が不足し、借金で補うなどの事態となりました。
法改正による売上減少
その後、派遣法の改正があり、クーリングオフ制度の施行があり、それにともなって大口取引先(売り上げが月2000万円以上)との取引が2ヶ月ほどできなくなりました。
これにより売り上げが急減。
派遣する従業員を集めなければなりませんでしたが、募集をかけるたびに集まる人は少なくなってしまい、人が集まらなくなってしまいます。
人手不足で派遣できる従業員が減少し、リーマンショック前は年間売り上げが3億円前後あったのが、年間売り上げが5000万円くらいまでに減少。
会社の利益を圧迫したので、役員報酬を最低限に減額するなどしましたが、それでも耐えられませんでした。
日本政策金融公庫から融資を受け、求人広告による人員確保を試みました。その結果、ある程度人は増えましたが、求人広告費が従業員一人当たり30万円ほどかかり、利益に繋がりませんでした。
その後は、一定期間ごとに売り上げが減るという悪循環になりました。
法改正により事業継続困難に
その後、特定労働者派遣の制度が廃止になり、一般労働者派遣の取得も純資産の基準を満たすのが難しいと判断。
そのため、労働派遣事業を廃止し、代表者が個人で行なっていた飲食業を法人で行おうと検討しました。
しかし、入金される予定の売掛金が国税から滞納消費税を理由に差し押さえられ、従業員の給与が支払えなくなり、資金ショートとなりました。
事業継続を断念し、自己破産の相談に来たという経緯です。
法改正リスク
法人破産の原因としては、このような法改正が原因で破綻してしまう事があります。
規制されている事業の場合には、法律の動向によって、それまでの事業ができなくなることもあります。
本件のような派遣業もそうですが、その他に、金融業や、投資関係、不動産関係など、規制されている産業は多数あります。
法律が改正されそうな話があるのであれば、その最新情報をチェックしつつ、事業の継続について判断しなければなりません。
法改正はビジネスチャンスにもリスクにもなります。
税金差し押さえリスク
本件では、税金の差し押さえによって、業態変更ができなくなっています。
確認してみると、滞納税金が約1300万円という状態でした。
税金の差し押さえについては、裁判所の判決がなくても、簡単にできます。
また、国税等の処分庁は、滞納者の情報を簡単に閲覧することができます。
そのため、預金口座の差し押さえ、売掛金の差し押さえ等、一般債権者よりも効率的にされてしまうことが多いです。
滞納税金がある場合には、このような差押リスクに不安を抱えながら経営をしなければならないことになります。
税金については、一般債権よりも優先して対応しておくべきものなのです。
それほど怖い債権者です。
今回のケースでは、全体の債権者の中で、金融機関の占める割合が低いという傾向がありました。
一般的には、このような滞納税金がある場合には、金融機関からの融資を受けるなどして税金を支払っているケースが多いです。
そうしておけば、急な差し押さえ等されるリスクが減り、経営が維持できていた可能性はあります。
銀行等からの借金については抵抗がある人も多いですが、会社の経営では、運転資金の確保のため、適宜、銀行取引をしていた方が長期的に見て良いケースもあります。
未払い賃金の立替え払い制度
本件のように、差押によって給料が払えなくなってしまった場合、未払い賃金立替え払い制度により、一定割合を公的機関によって立替え払いしてもらう制度があります。
早期に自己破産の申立ができるのであれば、破産管財人によって取りまとめ、証明書を発行、申請手続きもしてもらい、従業員への支払も早くなります。
売掛金から社労士費用
直前の売掛金は税金によって差押を受けたものの、 他の売掛金を回収できる見込みがありました。
そこで、それらの回収を、弁護士側でおこない、そこから管財予納金を含む破産申立費用を捻出したほか、解雇予告手当の捻出、社労士費用の捻出をしています。
業務の性質上、多数の労働者がいたことから、労働債権の集計、資料作成が必要となったため、申立業務として費用支出をしていて、破産申立をしています。
準自己破産の申立
本件では、会社を去った共同設立者が役員登記されている状態でした。
しかし、連絡が取れない状態でした。
そのため、取締役会の決議もできず、会社として自己破産ができない状態でした。
このように連絡がとれない役員がいる場合には、準自己破産という手続きを取ります。
会社という法人が自己破産の意思決定をできないので、代表者など一部の役員が申立人となり破産申立を進める方法です。実質的には、自己破産と同じですが、申立人の名義が異なります。
準自己破産は、代表者が行方不明というときに、他の取締役が申立人となっておこなうこともあります。
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