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Q.手形不渡りと法人破産での注意点は?

事業者の取引で約束手形が使われることもあります。

このような取引がある場合、法人破産手続きでも注意点があります。

そこで、今回は、手形取引の基本から特殊性、法人破産手続きでの注意点を解説します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.5.11

 

手形とは

手形とは、特定の期日までに指定された金額を支払うことを約束する証書で、事業者の取引などで、今も現金の代わりに使用されることがあります。

似たような仕組みとして、小切手があります。

まず、小切手との違いについて説明します。

 

手形と小切手との違い

手形と小切手はどちらも金額が記載された専用用紙を相手に渡す点で似ていますが、違いは以下の通りです。

小切手:現金化がすぐできる。当座預金残高をもとに発行する。
手形:原則、期日まで現金化できない。残高がなくても発行できる。

小切手はデビットカードの支払みたいなもの、手形はクレジットカードの支払みたいなイメージですかね。

 

手形取引の現状

近年、手形取引は減少傾向にあります。

リスクも多く、利用されにくくなっています。

法的には手形訴訟なども用意されていますが、法律相談で持ち込まれることはあまり多くないです。手形は、法人の倒産事件で、よく見かけます。

 

手形の種類

手形の種類について説明します。

支払手形:代金を支払う義務があることを示す書類。約束手形と為替手形があります。

約束手形:振り出し側が期日に支払いを約束する書類。買い手と売り手の間で資金のやり取りを行います。
為替手形:買い手、売り手、支払い手の3者間で資金のやり取りを行う手形です。

 

手形取引の流れ

手形取引の流れを説明します。

手形取引を始めるには、銀行で当座預金口座を開設する必要があります。手形帳を受け取ります。

約束手形では、振り出し側が手形に必要事項を記入し支払手形を作成し、受け取り側に渡します。

そこには支払期日が書かれています。

振出人は、期日までに支払金額を銀行に入金しておきます。

期日に受け取り側が銀行で取立依頼を行います。依頼を受けた銀行は手形交換所に手形を持ち込みます。振り出し側の銀行がその金額を引き落とす。銀行間で送金が行われ、受け取り側の銀行から支払いが行われます。


手形取引の流れ

手形取引のルール

手形には収入印紙が必要です。10万円以上の手形には印紙を貼る必要があります。

また、支払期日は60日以内に設定します。

長い期間が設定されていれば、それだけ現金化が遅れることになります。

手形支払用の銀行にお金が不足すると手形は不渡りとなります。
不渡りが続くと取引停止になります。

半年以内に2回の不渡りで事実上の倒産となります。

法人破産の申立の場合、この手形不渡の時期については裁判所に申告することになり、ポイントになる時期です。


また、約束手形は第三者に譲渡もできます。裏書譲渡をすることで、手形は他の会社に譲渡できます。

 

手形取引のメリット

支払いを先延ばしにできる点がメリットでしょう。

手形を使用することで、現金支払いを期日まで延ばせます。
期日までに額面の金額を支払えば問題ないのです。

また、一般的には、約束手形は銀行の審査を経ているため、信用性があり、資金回収がしやすいとは言われています。

しかし、上記のとおり、手形不渡りによる破産ということもありますので、そこまで信頼されるかは微妙なところです。

 

手形取引のデメリット

額面金額が10万円以上の場合、収入印紙が必要となり、印紙代がかかります。

これは手形作成者が負担するもので、額面金額によって200円から20万円まで変わります。

手形を多く発行する場合、印紙代の負担も大きくなります。

不渡りによる倒産のリスクがあります。支払期日までに銀行口座に額面金額が入金されていない場合、引き落としが行われず、これを「不渡り」と言います。半年以内に2回不渡りが起こると、金融機関との取引が2年間停止され、事実上の倒産となります。

もともと、手形は通常の売掛金よりも回収までの期間が長いです。そのうえで倒産までされてしまうと、回収できない金額がかなり高くなってしまうことも多いです。

 

手形のジャンプ

手形の支払が間に合わない場合に、手形のジャンプという方法がとられることがあります。

これは、資金繰りが厳しく、支払期日までに資金を用意できない場合、受取人に期日の延長をお願いして新しい手形を振り出すことです。

受取人が応じないこともありますし、これを機に受取人からの信用を失うリスクもあります。

 

手形取引を行う際には、これらのデメリットや特性に注意し、用語や注意点を理解して安全に取引を行いましょう。

具体的な注意点としては、振り出す場合には振出人の署名を確認し、金額の改ざんがないように注意すること。受け取る場合には、支払い条件や必要記載事項を確認し、裏書が連続しているかを確認することが挙げられます。

 

約束手形の現金化

約束手形は、特定の期日までに支払われるべき金額を保証する証券です。

発行者(振出人)は、受取人に対して約束手形を発行し、現金での支払いに代替されます。

期日が来れば、発行者の口座から支払いが引き落とされ、受取人は金融機関に約束手形を持ち込んで現金化できます。

 

約束手形は、発行者が現在資金を持っていなくても発行できます。支払期日までに現金を準備すればよいのです。

そのため、支払い期日を延ばすことができ、現金がないときには非常に便利です。ただし、期日までに支払いができない場合、信用の低下や取引の停止などの重大な影響があります。

 

約束手形の発行手続

約束手形を使用するには、発行者と受取人の同意が必要です。取引の支払い方法について、約束手形で支払うという合意がなければなりません。

合意ができた場合には、発行者は、銀行で当座預金口座を開設。当座勘定取引契約を結びます。

受取人は、支払期日に金融機関に約束手形を持ち込んで現金化します。

 

約束手形の譲渡

約束手形は、支払期日に金融機関に持ち込んで現金化するのが原則ですが、その他に現金化する方法があります。

手形自体は流通できる性質があります。

その方法として、「裏書譲渡」と「手形割引」があります。

裏書譲渡は、支払いを受ける権利を第三者に譲渡する方法です。受け取った手形を他の会社等に譲渡し、代金の支払いに使用できるものです。もちろん、手形による支払であることについて相手の同意は必要です。このように、手形を裏書することで、実質的には代金の支払に使え、支払期日前に現金化しているのと似たような効果となります。

手形割引は、期日前に金融機関に約束手形を買い取ってもらって現金化することです。

期日を待たずに現金化できるメリットがある一方で、手数料や利息が差し引かれ、受け取る金額は額面より減ります。

 

 

手形の不渡りの種類

約束手形を発行したのに、支払期日までに決済ができない状態を「手形の不渡り」と呼びます。

不渡りには3種類があります。

0号不渡り:手形の形式に不備がある場合
1号不渡り:当座預金に残高がない場合
2号不渡り:偽造や盗難などの場合

いずれもまずいのですが、1号不渡りが、お金がない状態での不渡りなので信用を大きく失うことになります。

 

手形貸付とは

手形貸付とは、約束手形を発行することで融資を受ける方法です。

手形は期日までに額面金額を支払うことを約束するため、迅速な資金調達が可能です。ただし、短期貸付であり、長期的な資金調達には向いていません。

ただ、この簡易さを使って、手形を発行させお金を貸し付ける方法が流行した時期もありました。

利息も含めて手形を発行させ、支払期日まで返済が難しければ、手形をジャンプさせる、その際に利息も加算したものに切り替えるという内容です。

自営業者や中小企業を相手に高利貸付で手形を使っていた貸金業者もありました。過払い金の対象になることも多かったです。

 

手形訴訟

手形・小切手訴訟とは、通常の訴訟よりも簡易迅速に債務名義を取得することを目的とした特別の訴訟手続です。

約束手形による金銭支払いの請求や、それに付随する法定利率による遅延損害金の請求の際に使うことができます。

 

手形・小切手訴訟では、通常訴訟と違う点が複数あります。

証拠は原則として書証に限られます。書証とは紙の証拠などです。証人尋問や当事者尋問は原則として認められません。手形・小切手という特性上、尋問が必要な事件では使えないものです。

また、反訴が禁止されています。

反訴とは?


さらに、一期日審理の原則が適用されます。

請求の認容及び棄却判決に対して控訴はできません。異議申立てのみが認められています。

請求認容判決の場合には、職権で必ず仮執行宣言がつきます。つまり、強制執行の手続きが可能になります。

手形・小切手債権を迅速に回収するための制度です。

 

手形・小切手訴訟の流れ

原告が手形訴訟として訴状と証拠書類を裁判所に提出します。

裁判所が訴状を審査し、審理期日を指定し、被告に訴状や期日呼出状を送付。


被告が答弁書と証拠書類を裁判所と原告に提出します。


原告と被告が審理期日までに追加の証拠を準備します。

もし、原告と被告が和解に至れば、判決手続きを経ずに訴訟を終了できます。

 

訴状の作成は、通常訴訟と同様に、原告が、当事者、法定代理人の表示と請求の趣旨を記載する必要があります。手形・小切手訴訟では、訴状の請求の趣旨に「本件は手形訴訟による審理・判決を求める」と記載することが重要です。

裁判所に納付する手数料は請求額に応じて定められており、通常訴訟と同じ基準です。

手形・小切手訴訟の管轄

裁判所の管轄は、事件の内容や当事者の居住地、請求額、当事者の合意等によって、どの裁判所が処理するかが決まります。

土地管轄は支払地や被告の住所地を管轄する裁判所に提起し、事物管轄は請求額によって簡易裁判所または地方裁判所に提起します。

 

手形小切手訴訟の被告

所持している手形が裏書きされたものであれば、被告にするのは、振出人でも裏書人でも良いですし、またはその両方を選択できます。

債権回収が見込める人、資力がありそうな相手を被告とするのが良いでしょう。

 

手形・小切手訴訟への異議

手形・小切手訴訟から通常訴訟に移行することがあります。

原告の申述または判決に対する異議申立てです。

原告の申述で移行する場合、被告の承諾は不要です。

一度、通常訴訟に移行すると手形・小切手訴訟には戻れないため注意が必要です。

異議申立てで移行する場合、通常訴訟として手続きが進みます。

 


手形債権と破産管財人

手形の利用は減っていますが、法人破産の中では見かけることが多いです。

約束手形が発行された場合、手形の債権と元になる原因債権があります。

法人倒産などの手続きでは、これらの関係が問題になることがあります。

手形金債権と原因債権の関係は複雑です。

約束手形が支払いの代わりに振り出された場合、原因債権は消えます。

担保のために振り出された場合、両方の債権が並行して存在し、どちらも行使可能です。

しかし、支払いのために振り出された場合、手形金債権を先に行使する必要があります。

担保のために振り出された場合でも、債務者は手形と引き換えに原因債務を支払うという抗弁が認められます。

手形金債権は、その性質上、譲渡される可能性があり、抗弁権はどうなるのかという特殊性を考慮する必要があります。このため、異なる対応が必要となります。

 

破産手続での手形債権の債権届

手形金債権と原因債権が並行して存在する場合、請求権の競合のような問題が生じます。

破産手続きでは、債権者は配当を受けるために債権届をすることがあります。

実務上、手形や小切手債権について債権届出を出す場合、手形や小切手の写しを添付します。

破産管財人は、これを見て債権認否を行うことが一般的です。

 

原因債権だけで債権届出があった場合、債権者が手形を所持しているかどうかを確認する必要があります。

手形の所持が確認できれば、債権届出を認めることになります。配当を行う際は、手形の呈示を受けた上で、配当を行います。手形債権と同様に取り扱うことになります。

 

原因債権者が手形を所持していない場合、一時的に異議を申し立て、手形の所持を回復した段階で、異議を撤回することが実務的に望ましいとされています。

手形所持者からの手形債権の届出がされてしまう可能性があるからです。

 

請求権の競合は破産手続において複雑な問題となりますが、破産管財人が適切に対応することで、ほとんどの事案で問題なく解決されると考えられます。しかし、現実に紛争となるケースもあり、債権認否の際には注意が必要です。

 

手形・小切手債権の債権届

手形債権を破産債権として届け出る際には、手形の表裏両面のコピーを添付する必要があります。

添付されていない場合、破産管財人は債権者に早急に提出を求めることになります。

手形債権を検討する際には、手形要件や裏書の連続性、手形の所持などを確認します。

もし手形要件が不備であった場合には、破産管財人は債権者に連絡し、不備を補充して再提出を求めるのが通常です。

裏書の連続とは、裏書が所持人まで連続していることです。破産管財人は、債権者が裏書の連続を満たした被裏書人であるかどうかを確認するのです。

手形の原本がない場合、手続きが煩雑になる可能性があります。

 

手形債権と中間利息の控除

破産手続開始決定から満期までの期間が1年以上の場合、中間利息が劣後的破産債権となります。

支払期日が1年未満の場合は、額面金額をそのまま破産債権として認めます。

1年以上経過後に到来する場合、中間利息を控除して普通破産債権と劣後的破産債権に分けて認否します。

普通破産債権額と劣後的破産債権額は以下のように計算されます。

普通破産債権額 = 額面金額 ÷ (1 + 0.06(その時点の法定利率) × 破産手続開始決定から支払期日までの年数)

劣後的破産債権額 = 額面金額 - 普通破産債権額

最近は、1年以上先の支払期日であることは少ないため、実務上は、この中間利息の控除はあまり問題にならないかもしれません。

 

約束手形と原因債権の関係

約束手形は、支払いの代わりに発行される場合と支払いのために発行される場合があります。

しかし、一般的に特別な合意がない限り、支払いのために発行されたとみなされます。

このため、手形債権と原因債権は別々の請求権として存在します。

手形債権の届け出には、手形のコピーが必要ですが、原因債権の届け出には、請求書や納品書などの資料が必要です。手形債権の届け出は簡単ですが、手形要件が欠けている場合、破産管財人は認めません。

両方の債権を持っている場合、どちらの債権を届け出るかは債権者の意思次第です。

ただ、両方が届け出られた場合、破産管財人は片方の取り下げを勧めます。応じない場合は認めないことになるでしょう。

 

 

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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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